本編(今宵)
5
「陸」
「ん?」
陸は名前を呼ばれた事にドキリとしながら、パフェから顔を上げた。
「ほら、お前。クリームついてる」
青樹はそう言って、陸の頬に付いていたクリームを自らの指で取った。
「あっ!ごめんね」
陸は青樹の行動に驚きながらも、謝罪の言葉を口にした。
「うっ、あま…」
青樹は指に付いたクリームを口へと運び、そしてその甘さに眉を寄せた。
「あはっ、だってクリームだもん」
陸は当たり前だと言葉を溢す。
「よくこんなもん食えるな」
青樹は余程舌に味が残っているのか、コーヒーを一気に飲み干した。
「美味しいのに…」
陸はそうぼやくとパフェを自らの口へと運んでいった。
「うん、やっぱり美味しい」
陸は満足そうに笑う。
「青樹こそ、よくそんな苦いモノ飲めるね」
少し眉を寄せながら言う。
「ああ、別に普通の味だろ?」
「普通な訳ないよ。僕、一生飲めないと思う」
そんな陸の言葉に青樹は笑った。
「当たり前だろ。お前にコーヒーなんて似合わねーよ」
「何か青樹、僕を馬鹿にして無い?」
「そう聞こえるのかよ?」
陸は頬を少し膨らまして青樹を少し睨む。
陸は思う。凄くこの時間が楽しいと、
まるで、自分に都合の良い夢を見てるような、そんな錯覚さえしてしまいそうな程。
戻る進む
[戻る]
無料HPエムペ!