本編(今宵) 3 『陸………俺は………』 携帯の向こう側で青樹は言葉をに切った。 陸は続くであろう言葉を黙って待っていた。 だが、いくら待っても青樹が言葉の続きを言うことは無かった。 「…青樹?どうしたの?」 陸は心配になり青樹に問い掛ける。 『………いや、ごめん。なんでもない』 青樹は『なんでもない、なんでもないんだ』と小さく繰り返した。 それは陸に対して言っているのではなく、自分自身に言い聞かせているかの様だった。 『明日、昼飯一緒に食わねぇか?』 話は唐突に代わった。 陸は気になったものの、今飛び込んできた思いがけない誘いによってそれは消された。 「えっ、本当!良いの?」 陸は直ぐ様食い付く。 『くくっ…ああ、一緒に食べよう』 陸はその返事を聞いた瞬間空いている方の手で、小さくガッツポーズを決めた。 「絶対だよっ!明日、駄目になったなんて言わないでね!」 陸は何度も何度も念を押す。 『わかった、わかった』 青樹は陸を落ち着かせながら笑っていた。 これが偽りでも、一時の夢でも良いと思った。 罰はちゃんと受けます 今だけ 今だけは幸せだと想わせてください。 自分の犯した罪を忘れさせてください 今だけ 今だけでいいから 戻る進む [戻る] |