本編(今宵) 5 「…そっかぁ…」 陸は其処で初めて、昴の変化に気付いた。 そして陸も昴が見上げている空を見上げる。 「あのね、昴」 「なに?」 「ありがとう。多分、言葉では伝えきれない程、僕は、昴や隆志に感謝してるの」 陸の言葉に昴は陸へと目線を移した。 今度は、陸が空を見上げたまま話しだす。 「僕さ、こんな性格だから、昴達に出会うまで友達って呼べる人、殆どいなかった」 陸は少し間を空けた後、続ける。 「中学の時は、イジメとかじゃ無かったんだけど、何時も皆遠巻きに僕をみてて、だから自分から話しかけるのが怖くて、結局行動出来ないまま終わっちゃった。 話しかけてくれたりとかそんなんのはあったんだ。移動教室だって一緒に行ってくれた。けど、放課後にこうやって寄り道したりとか、休みの日に遊んだりとか一度も無かったんだ」 陸は昴へと自然を移した。 二人の目線が絡むと、陸は微笑んだ。 「だから今凄く幸せ。昴があの時声を掛けてくれなかったら、まだ僕は昔のままで、自分でどうにかすることを知らなかったと思う。 こうやって寄り道してクレープを食べる楽しさとか、友達って存在がどれだけ大切かとか、たくさん教えて貰った。 本当にありがとう、そして、ごめんね。 心配してくれてるって気付いてるのに、知らない振りして……」 昴は何をとは聞かない。多分、これだろうとわかっていたから。 「その優しさに甘えたの。でも駄目だよね。これじゃ何も変わらない。頼ってばっかりじゃ駄目だもん。僕だって、昴や隆志の支えになりたい。何時かって時に頼れる存在でありたい」 「りく……」 昴は驚きで目を見開く。だが、それは直ぐに笑顔にかわった。 戻る進む [戻る] |