本編(今宵) 2 「あっ……、その……」 陸は言葉を濁らせる。 こんな所で会うなんて! 陸は内心、酷く焦っていた。 何がと聞かれれば、どう答えたら良いかはわからない。だが、昴と居る時に会いたくは無かった。 昴だけじゃない。 隆志と居る時にだって… 陸の背中に、ゾッと何が走った。 もしも もしも、青樹と一緒に居るときに、相良と偶然会ったとしたら 陸は必死にその考えを頭から振り払った。 「陸!なぁ、聞いてる?」 急に塞ぎ込んだ陸に、昴は音量を押さえて言う。 「………えっ、ぁ、なに?」 昴は小さくため息を溢した。 「陸、どうした?何か可笑しい」 昴は眉を寄せる。 「そういえば、自己紹介がまだだったね。」 ほったらかしにされていた相良が、口を開いた。 「はじめまして、昴君。私は、陸に勉強を教えている紫鳳院と言う者だよ」 陸は相良の言葉にほっとする。 「あっ、紅昴です。陸にはお世話になってます!」 昴は差し出された相良の手に慌てて手を差し出し、握手を交わした。 「ははっ、陸に聞いた通りの子だね」 昴はキョトンとする。 「かわ「あぁーっ!それ言っちゃ駄目だって言ったじゃないですか!」……あ、そうだったね」 陸は慌てて相良の言葉を遮った。相良はそんな陸を見てクスリと笑う。 「もうっ、相良さん!絶対、今のワザとでしょ!」 陸は頬をぷっくりと膨らませて相良を見上げる。 「はははっ、ついね。ほら、だって焦る陸って可愛いからさ」 「…っ!相良さんの、バカっ」 陸は恥ずかしそうに顔を反らして、ボソリと呟いた。 戻る進む [戻る] |