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本編(今宵)
はじまり

『今度は何時会おうか?』

その相良の一言で、一回切りだと思っていた関係は今も尚続いている。

二回目、相良の車でちょっとしたドライブに出掛けた。

三回目、初めて陸は相良の家に招待され、手作り料理をご馳走して貰った。


四回目、


初めて…陸は青樹以外の人に抱かれた。


不思議と嫌気は無かった。

だけど残る、後悔……

相良は陸が欲しい言葉をたくさん与えた。


こんな自分を『可愛い』と言ってくれる。


抱いてくれる時、『好きだ』『愛している』と呟いてくれる。


それが嘘だとわかっていても、陸の心は不思議と温かくなった。


愛しい人からは決して言っては貰えない言葉。だからこそ、陸は異常にそれを求めてしまっていた。





この関係が二ヶ月目に突入した頃、陸は高校2年生へと無事に進級した。

陸と青樹はクラスは別々に別れてしまったが、陸は内心ほっとしていた。

この一年、どれだけ耐えて来ただろうか。

青樹が、自分以外の誰かと一緒に居る姿を見る度に胸が痛んだ。

誰かが青樹に触れる度に、嫉妬にかられた。

目をそらしても、耳に伝わってくる笑い声。
耳を押さえたい衝動にかられながらも、必死に聞こえない振りをし続けた。

決して越える事の出来ない壁を感じて、嫌でも現実を受け止めるしか出来なかった。

時々、気を使ってか話しかけに来てくれる青樹は、また少し言葉を交わした後、直ぐに手の届かない場所へと戻って行く。


自分は一体何をしているのだろう。

そんな事を考える日々が続く様になった。



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