Short Story
1
石田三成という人間は、何事にも基本的に無関心である。彼が唯一反応を示す事柄は、彼の後見人である豊臣秀吉とその右腕の竹中半兵衛のことのみで、それ以外には全くと言っていいほど食指を動かさない。下手をすると生命活動すらも疎かになるこの男を、家康は数少ない友人として心配していた。
秀吉とは多少付き合いがあるという理由も手伝い、家康が様子見(という名の生存確認)に三成のマンションを訪れることはそう珍しくないのだが、しかし部屋の主は訪れる度に心底嫌そうな顔をするので、煙たがられない程度にと心掛けていた。
そんな三成には友人が少ないとは言え、それは家康一人ではない。彼を心配するものは他にもいるのだが、一人は病弱で入退院を繰り返し、一人は根無し草であちこちフラフラしており、一人は女性だが「かいがいしく世話をして周囲に誤解されても困る」と三成のマンションには近寄らなかった。
そんなわけで三成のもとに人が訪れることはあまり無い。
なので、呼び鈴を鳴らした後に扉を開けた人物が家主と違うなど、想像もしなかったのだ。