[携帯モード] [URL送信]

他ジャンル
君のすべてを知りたくて・1(天下人サナダテ/戦国)

とても同じ人間とは思えないほど青白い肌に、ぱっと赤い花が咲いていく。明日には消えてしまっているかもしれない、命の短い花だが、幸村の独占欲を満たすのには十分だった。その花を愛でるように舐め上げれば、病的なほどに白い肌も少しずつ色がついていく。まるで、雪に覆われた厳しい冬から、桜舞い散る春へと移り変わるようだった。
しかし、当の政宗の心境は複雑そうであった。自らの劣等感の根本である疱瘡の跡は、あちらこちらに残っている。母ですら嫌悪したこの醜い姿を、他の人間が愛してくれるはずが無いと心の根底で思い込んでいる政宗は、未だ肩にかかり背中にまとわりつく自らの着物を脱がせようとはしなかった。そこが一番病の跡が強く残っている場所だからだ。
しかし、それに気がつかない幸村ではない。

「・・・見せてくれよ。見たい」
「駄目だ」
「何で?」
「・・・・・・俺のこと、嫌いになるだろ」

紫水晶の瞳は、いつもの自信に溢れた光を宿していなかった。

「そんなこと言ったら、俺の身体だって傷だらけで見れたもんじゃねぇよ」
「お前のそれは戦場での傷だ。戦傷はもののふの誇りだろう・・・だが俺のは違う」
「・・・俺から見れば同じだ」

脱がせまいと裾を握りしめていた政宗の指を、ほどくように絡めとり、そのまま布団の上に押し付ける。多少の抵抗があったが、構わなかった。
幸村の言っている意味が理解できないのか、独眼は不安で揺らめいている。

「俺の傷も、お前の病気の跡も、命を取るか取られるかの状態でついたものなんだ。お前は死んでもおかしくない病気に勝った。その跡は、何よりの証拠なんだから、そこまで嫌うことも無いと俺は思うんだがな」

政宗の視線が幸村の肌を刻んでいる傷跡へと移る。大小さまざまな傷があるが、体中無数にあるそれは、おそらく戦場から遠い者から見れば目を背けたくなるものであるだろう。
こんな傷くらいで劣等感を覚える様な人格ではないと政宗は思っているし、実際幸村はこの傷を疎ましく思ったことは無い。だからこその、取り方によっては政宗の心情を理解していない発言であったのだが、政宗の心を動かすには十分なものであった。

「そんなことを言われるのは、初めてだ・・・」

伊達家当主が病によって醜い姿をしていたら、兵の士気に関わるかもしれない。何より、劣等感を感じていたのは政宗であったのだが、家臣達もまたそれを感じていたに違いない。周囲から隠せと言われ続け、その跡は醜い汚点だからと理由をつけられれば、まだ自我を持ったばかりの幼子はそれに従うしか無かったのだろう。
いまだ着物の裾を握りしめているもう片方の手もほどき、肩から背中を撫でるのと同時に長い間人目から隠され続けてきた肌を露にする。向き合った体勢の今では視覚で認めることは出来ないが、手に触れた感触ではただれたようなその跡はたしかに嫌悪もしそうなものだった。もう痛みは無いはずなのに、その跡に触れるたびに政宗の身体が強張る。

「そんなに緊張すんなって」

緊張を和らげようと耳元でささやいてやるが、長年心にひっかかっていたものがそう簡単に消えるはずも無く、仕方なく幸村は病の跡があまり無い腹部へと手を滑らせた。目に見て分かるくらいに政宗が安堵したのが少し物悲しく感じるが、こればかりは長い時間をかけて解決していくしか無いらしい。
すまん、と小さく政宗がつぶやく。
謝罪の言葉は不要とばかりに、幸村は政宗の口を己の唇で塞いでやる。口内へ舌を滑り込ませれば、たどたどしくも政宗はその深い口づけに応じてくれる。次第に甘みすらも感じる様だった。どこかぎこちない舌を吸い、甘く噛み、余すところ無く口内を味わう。
一方、幸村の手は政宗の下帯に手をかけていた。それに気がついた政宗が身体を強張らせるが、幸村は構わず手を進める。

「んぅっ・・・ん、んむっ・・・」

愛撫の手は政宗の熱に届く。敏感なところを擦られ、政宗の身体が跳ねた。それに気を良くした幸村は責めの手をさらに強くする。弱いところは、同性なのでだいたい熟知している。しかも相手はこういった色事に免疫のなさそうな政宗だ。慣れない快楽に臨界点を早々に迎え、幸村の手の中で吐精を向かえてしまう。それと同時に接吻で塞いでいた口を解放してやれば、艶のある震えた吐息が蹂躙され赤く熟れた唇から漏れた。
長い口づけと性急な責めに息を荒げる政宗を見下ろし、幸村は不敵に笑う。

「まだ根を上げるには早いぜ、政宗」



[次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!