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アイザキガカリ
6
 意地になって何度もクリップをつけてよこしたから、もしかして俺は嫌われたのだろうか。
 俺じゃなければもしかしてもっと早く反応があったのかもしれない。
 もしも相崎が登校するようなことがあったらものすごく気まずい。どうしよう。

 やはりまだ体が弱っているのか、悲観的なことばかり頭に浮かんだ。
 いいかげん、寝て忘れてしまおうと眼を瞑ったそのとき、家のチャイムがなった。階下から聞こえる母の応対の声をぼんやりと訊いているといつもより声が高い。
 客だろうか、と思った時「お友達よー」と母の声の後に二言三言なにか交わす声がしたあと階段を上がってくる音がした。
 裕介あたりだろうと思って起き上がる。Tシャツにトランクス一枚で寝てたのでさすがに下に何かはこうとあたりを見回し椅子にかかっていたハーフパンツを発見した時、ドアが開いた。そちらには眼をむけずそれに手を伸ばしつつ言った。
「電話しなくてごめん。ずっとねててさ、さっきメール気づいた」
「電話?」
「………。」
 返された声は裕介のものでも知っている誰のものでもなかった。
 驚いてドアに眼をむけ、まったく知らない長身の男がそこにいるのにさらに驚く。
 しかし一番驚いたのはその男がとんでもない男前だったことだ。
 男前。ちょっと違う。ハンサム。これもなんだか違う。美形、だ。 長めの前髪から覗く眼はくっきりとした切れ長の二重で睫が長い。黒い髪はなんというか艶があってサラサラで、色白の肌がさらに映える。
 しかもジーンズに包まれた脚は長く顔は小さく……俺はこんなに綺麗な人間をはじめてみた。
「どちら……様?」
 俺が呟くと、男前はわずかに眼を見開き、愉快そうに喉の奥で笑った。花が咲いたようだ。
「ああ…。そうか、お前からは見えないんだっけな。…とりあえずそれ履けよ。眼の毒だ」
 言われてはっと気づくと俺は中途半端にハーフパンツに脚を通したままだった。あわてて引き上げ、チャックを閉める。
「ええと、ほんとに誰?」
「察しが悪いな。俺は相崎だ。相崎貴史」
「………」

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あきゅろす。
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