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アイザキガカリ
5
 2度目のマンションは勝手知ったるもの…とまではいかないが幾分気が楽だ。
 再びコンビニに自転車をとめ、今度はガムを買ってからすぐに相崎のマンションへ向かった。
 われながらどうかと思うような曖昧な会釈を警備員にして、インターホンに向かう。
 例によって応答はなく、俺は警備員のところへ引き返してまたポストのある小部屋に入れてもらった。
 ポストにプリントを投げ入れようとして、俺はふと集合ポストの脇にある掲示板に気がついた。
 そこには『○○新聞の方へ』とか『チラシの投函厳禁』とか、配達員へ宛てらしき張り紙がしてあったが、その一つに見覚えのあるクリップがはさんであった。
 俺が一週間前、相崎へのプリントを挟んだあの熊のクリップだ。間違いない。
 それを見て、俺は腹立ちを覚えた。
 わざわざ遠回りして来てやっているのに、なんて仕打ちだ。返してもらうつもりなどなかったし、返すにしたってもっと方法があるだろうと思った。
 担任に言われて来ているだけで純粋な好意だったわけではないが、なんだかそれが踏みにじられた気がした。
 相崎はどうやら美少年らしいが、顔のいい奴っていうのはやはり性格が悪いのか。
 俺は報復とばかりにそのクリップを手にとると、再び持ってきたプリントをそれで挟み、ポストに投げ入れた。
 よく考えると、俺もたいがい性格が悪い。
 
 それから幾度となく俺はプリント配達を担任に頼まれ、そして忌まわしくも掲示板にクリップを発見し、それでプリントを挟んでポストに投げ入れるということを続けた。
 たとえプリントが1枚でもクリップをつけてやった。
 
 そんな日が続いて、もはやクリップの応酬が恨み(?)ではなく習慣と化し、俺が「相崎係」としてクラスの一部の奴らから認識されたころだった。
 俺は不覚にも夏風邪をひいて高熱をだしてしまい、学校を3日も休む羽目になった。
 その3日目のことだ。もはや熱は下がり、大事をとって休んでいるに過ぎない、いわばほぼサボりな状態だった。
 昼寝から目覚めると、裕介からメールが来ていた。
 
 件名:大ニュース!
 
 彼女でも出来たかと開いた本文は、予想もしないものだった。
 
『具合どう?だいじょうぶ?ところで今日、俺が相崎のうちにいったんだけど、相崎が応答した!電話くれ!!!』

 俺はあわてて起き上がった。頭が真っ白だった。
 じわじわと、悔しさのようなものが沸いてきた。その一方で自分がショックを受けているらしいのが不思議だった。
 たとえていうなら毎日かかさず行っていたラジオ体操をたまたま休んだときにヤクルトがでたようなそんな悔しさ。
 メールには電話をするように書いてあったがなんとなく誰かと話をする気も起きず、俺はベッドに再び横たわった。

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あきゅろす。
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