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答えはキミの中に

高校生といえば性行為とやらに興味が出てきて自慰行為だとかそういったことをするお年頃だ。
初恋の人は覚えているかと聞かれると覚えていない、大体の初恋って叶わないものらしい。
とにかく高校生っていうのはそういうお年頃なのだ。
なのに、なのに俺ときたら高校生活で初の恋の相手が男ときたもんだから自分で何やってるんだと思ってしまう。
それでも好きなものは好きなのだからしょうがないなんて。

「おや?ギンタが先にここにいるのは珍しい」
「いちゃ悪いのかよ」
「別に?」

からかうように微笑む奴に苛立つような苛立たないような。
俺の恋の相手はどこで何をしてるかわからない得体の知れない絵描きさんだ、俺はなかなかエキセントリックな青春をしてる気がする。
会うのは決まって夕方か朝、学校をサボってる時間だ。
場所は大体西の海岸かベンチがポツンとある高台。

今日会ったのは西の海岸で、レイジさんは珍しく片手にキャンパスを持っていなかった。
そんな今の時間帯は青空が綺麗で太陽の眩しい朝、海岸の砂が靴に入って気持ち悪いが海の風は気持ちがいい。
…ようするにサボりだ。
皆が授業を真面目に受けているときこうやって自由に外をうろつくのは非常にすがすがしい気分だ。
ざまあみろクソ真面目な高校生達、俺は変わった青春を楽しんでおくからお前らはおとなしく勉学に励んでやがれと意味不明な罵倒を言った、勿論脳内で。

「いいのかい?学校をサボって」
「今さらだろ」
「それでも勉学は学生の仕事だよ?」
「だったらあんたも仕事したらどうだ」
「失敬な、オレだって仕事くらいしてるよ」

何を言っても嘘にしか聞こえないのは何故だろう。
綺羅星十字団以外のコイツは絵を描いてる姿とかしか見たことがない。
後は議長と話しているところとか。
謎すぎる、普段本当に何をしているんだ。

「そんなに気になるならいつもみたいに覗き見すればいいじゃないか」
「なっ……!覗いてねぇ!」
「いくら鴉に乗り移ってるとはいえあれは立派な覗きだろう?」
「俺があんたの私生活を覗いたみたいに言うな!」

どうしてだがコイツと話してると調子が狂う、感情がむき出しだ。
覗き見だとは人聞きが悪いったらありゃしない。
……そりゃ確かに少しは覗いてみたいが。
謎が謎を呼ぶ、ミステリアスな人程知りたくなる。

「そうだな、じゃあひとつだけ質問に答えてあげよう」
「……は?」
「オレのこと知りたいだろう?」
「自意識過剰…」
「ギンタもね?」
「違っ…!」

売り言葉に買い言葉というか、未だにコイツに口喧嘩で勝てた試しがない。
冷静な判断から下されるこの男の処世術とやらは他の人間とは比べものにならないくらいレベルが高いものだから、俺が知る限りでは今まで誰も口喧嘩でレイジさんを負かした者はいない。

「で、知りたくないのかい?」
「…知りたいです」
「よろしい」

ペースに乗せられてしまっているが気にしない。
もう今さらだ。
質問というのもなんだかいきなりな気がするがやっぱり気にしない。
それでもいきなりの質問はやはり悩むもので、はたして何を聞くか。
ひとつだ、ひとつしか聞けないのだ。
歳は何歳?どこから来た?普段何してる?
何しろ謎が多いもんだから聞くことも多すぎる。

「決まらない?」
「多すぎて。ひとつじゃなきゃ駄目な訳?」
「駄目、ひとつに絞れない?」
「……絞れない訳じゃないけど」
「ふーん?で、なぁに?」

わざわざ俺の顔を覗き込んで上目遣いをしてくるあたり確信犯なんじゃないかと思えてくる。
無意識だったらなんとも質が悪い、他の奴がホイホイ付いて来ちまうぞ、是非ともやめてほしい癖だ。

「…聞いて変な顔すんなよ」
「場合によっては」
「ひっでぇ」
「さ、言ってごらん」
「…俺のことどう思ってる?」
「それが質問?」
「……ああ」

恥ずかしい質問をしてしまった!と思った頃にはもう遅い、奴はくすくすと笑いだす。
何を聞いてるんだ俺は、きっと生涯の黒歴史になるに違いない。
でも好きだといいなとか心の隅っこで思ってたり。
好きって言ってほしい、けどもきっと言ってはくれないだろう。

「どう思ってると思う?」
「…質問に質問返しかよ」
「冗談だよ」

トン、と白い指が俺の左胸を叩く。
くすりと笑ってから耳元でこう囁かれた。





答えはキミの中に






「なっ……!」
「ね?わかりやすい」
「からかうな!あーっ、くそっ!」




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あきゅろす。
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