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優しさに生かされてます

眠れないといい心の海に溺れる最中、伸ばされた手に手を伸ばしたらはじめて他人の優しさを知った。




優しさに生かされてます




「ほっといてくれ」
「ほっといたらいつまでもふて寝してるだろう」

部屋に来ると相変わらずベッドでごろごろしている、自分で起きるのを最近見ない。
リョウスケは自分が優しさを与え甘やかしているのが駄目なのだろうかと思った。
このままでは自立出来ないんじゃないだろうか…今さらだが。
…結局のとこ好きでやっていることなのだが。
リョウスケはそこらのコンビニで買ってきたおにぎりや菓子パン、飲料水の入った袋をレイジに差し出す。
受け取る様子もなく、枕元にポスッと袋を置いた。
何をやってもベッドから起きようとしない彼に深くため息をつく。

「いつまでそうしてるんだ」
「いつまででも」
「いい加減に起きろ」
「リョウスケさんが手を引いてくれるなら」

ん、と言って左手を天井に向かい伸ばしたレイジの気だるそうな顔と言ったら。
心底起きるのが面倒くさそうだ。
薄暗い部屋の中でもリョウスケを伺う瞳の色はしっかり見えた。
その目には今は何が見えているのか。
一度困ったような顔をしたが、リョウスケは無言でレイジに近づき力強く手を引っ張った。
いとも簡単にレイジの体は重力に逆らいベッドのシーツから離れていく。

「わっ、」
「そらっ、起きろ」
「………」
「どうした」
「…まさか本当にやってくれると思わなくて」

今さらそこで照れる必要はあるのか、最早このくらいの行為はリョウスケからしたら何も恥ずかしくないのに。
やるとこまでやったのに、今さらなのだ。

「これ、食べていいんだよね?」
「ああ、早く食べろ」

彼に望む物を与え、同時に自己満足として望む物を得る、あの頃は想像しなかったであろう、これが今の日常なのだ。





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二人ともまじ夫婦すぎて


あきゅろす。
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