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冗談じゃない!
俺はいつだって自由であり自由ではない、常に自らに縛られて生きている。
一羽のカラスが俺のすぐ側まで飛んでくる。
鳥は自由でいい、生まれ変われたら鳥になるのもいいかも知れない。
ベンチに背を預けるとそよ風が俺の頭をするりと撫でる。

「……キミは自由でいいね」

カラスはきょとんとしたような顔をしてから何事もなかったかのように飛び立つ。

(この空が俺のものだったらどんなによかっただろう)

黒い羽がふわりふわりとベンチの上に一枚(ひとひら)、音もなく落ちてくる。
空を見上げると雲は何事もなかったかのように流れている。
今日は不思議と気持ちがいい、しばらくここにいよう。

「今日のあんたは随分センチメンタルなんだな」
「…キャメルスター……いや、ギンタか」

ということはあのカラスは、なんて考えてしまう俺も中々職業病なのかも知れない。
正直彼にはあまりいい印象がない、俺のことを普段からどうも疑っているらしい。
…でもたまには綺羅星十字団以外のことを考えたってバチは当たらないハズだ。
一々そんなことばかり考えていても疲れるだけ、あまりいい話相手とは言えないけれど。

「……今日くらいは仮面を被っていない自分でいたい」
「なんかあんたらしくないな」
「じゃあキミの中の俺はどんな風なのかな?」

俺らしいってなんだろう?
随分前に自分というものを捨ててしまった気がする。
それでいながらまだ自分でありたいと望む今の俺は本当?嘘?

「聞いてどうする?」
「さぁ…どうしようね」
「…あんたは嘘つきさ」
「……まあ不定はしないね」
「それでいて、儚くて綺麗だ」

儚い?俺が?いつだって彼が言う言葉は曖昧だ。
綺麗なんて言葉は女性に使えばいいものを。

「キミも中々嘘つきだね」
「レイジさん程じゃない」
「…名前で呼ばれるとむず痒いね」

指で小さな四角い窓を作って空を見る。
次はこんな絵を描くのもいいかも知れない、こうやって窓越しに世界を見ると普段とは違う世界が見えるような気がする。

「あんたのそれ癖?」
「そうかもね」
「それで俺のこと見て欲しいなぁ」
「どうして?」
「俺だって今日くらい仮面を脱ぎたい」
「なら一人でそうしてればいいじゃないか」
「わかってないなぁ」

そう言って肩に回された手の強引さといったら!

「俺は大好きなあんたと一緒にいたいって言ってるの」




冗談じゃない!





本心なのかなんなのか知らないけど、そういう事は言わないでほしい!

「今日くらい何も隠さず話そうよ」
「やめてくれ、俺はキミと話すことなんてない」
「そんな釣れないあんたも好きだよ」
「……〜、」





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うちのギンタはツンデレのハズがまったくツンデレ感を出せてない←


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