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迷い子の独り言
絵を描くお前が好きだった。
夕日に照らされるその生き生きとした顔が、心から好きだった。

(どうして変わってしまったんだ)

「最近絵は描いてないのか?」
「ん…?んー……」

お前の描く絵が好きだった。
真っ白なキャンパスに鮮明に風景を映し出す絵筆が踊る旅に俺はどんな絵が出来上がるのか楽しみにしていたものだ。
そしてその絵を見るために島中あちこち駆け回るお前を探すのも楽しくて、お前の姿を見つけた時はいつも日が暮れそうになっていて。

「最近ね、また描いてみてるんだ」
「絵を…か?」
「あの夕日を…ね」

あの夕日、きっとあの高台からあの日見た夕日のことだろう。
レイジが描く気力を取り戻したのは嬉しい、だがそれは何に繋がるだろう?
時がまた前のように戻る訳でもなければこいつが前のように無邪気な笑顔を見せてくれるとも思えない。
でも本当は期待しているのだ、またあんな風に無邪気な笑顔をキャンパスに向けてこれを描き足そう、なんて言いながら楽しそうに絵を描くお前を。

「あの夕日が好きなのか?」
「…わからない、けど」
「けど?」
「あの夕日を何故か描かなきゃいけない気がするんだ…何か、大切なことを忘れていて……あの夕日を描いたらそれが思い出せるような気がして」

ああ、まだ大切な何かを完全に忘れてしまっている訳ではないのだと俺は胸を撫でおろす。
弱々しく微笑んだその表情の美しさだけは何もかも変わらないというのに、忘れかけている大切な想いはどこへいってしまったんだ。




迷い子の独り言






(けれども今も変わらないその微笑みが俺の心を掴んで離さない)
(今でもお前が好きなんだ、たとえ変わってしまっても)
(でも出来るなら元のお前に)




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あきゅろす。
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