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積極的恋愛術

どういう訳だか南の島なのに雪が降った。
一体どういうことだか知らないが普段から雪なんて降らないからいきなり降ると寒くて寒くて仕方ない。

歩く度に白い雪がぎゅっ、ぎゅっ、と鳴る。
少し靴に入った、冷たい。
だがそんな雪のことはどうだっていいのだ、とりあえず暖まりたい。
それにしてもコートを着てても寒いとは何ごとだ、普段雪なんて降らないものだからこんなに寒いとは思わなかった。
とりあえず温かいものが飲みたい、自販機に何故か都合よくあったかいと書かれたココアが目に入る。
南の島の自販機にホットココアってどういうことだとか気にしない、俺は今この瞬間暖まることが出来れば別にいい。
寒くて嫌だな…そう呟きながら自販機のボタンを押す。
缶が降ってくるとガタン、と鈍い音がしてそれ同時にお釣りの小銭がじゃらじゃらと出てきて鬱陶しい。
ついでに屈むと垂れてくる前髪も少し鬱陶しい。

(うわ…全部10円玉)

財布が重くなったところで取り出し口から缶を取り出す。
冷えた指先に熱いココアの缶が触れ、指先からじわじわと暖かくなっていく。
しかしいつも思うが自販機から出てくる「あったかい」と書かれた飲み物は温かいどころか熱いと思う。
俺は猫舌なので自販機独特のこの温度設定はどうも好きになれない。
カシュ、と音を立てながら缶を空けて一口、やっぱり熱い。
未だに降ってる雪のお陰で周りは寒いのにココアは熱い、なんだか虚しい気分になってくる。

「あれ、あなたでも街中にいることはあるのか」
「……いるのはおかしいかい?」
「…いや、どうしたんだ?こんなところで」
「少し…寒くてね」

ふと声を掛けられ、横を見るといたのはシンドウ・スガタ君。
マフラーで口元が隠れて表示がイマイチ伺えない。
彼は寒いのにさらに涼しげな顔をしてるものだから顔色が悪いように見えてしまう。
恐らく気のせいだろうけど。

「何飲んでるんだ?」
「ホットココアだよ、暖まりたくてね」
「ふーん…僕も少し暖まりたいかな」

そう言ってから俺のココアを奪うまでが早かった。
俺の手からココアが消えている、と思ったら既にスガタ君が飲んでいるのだ。
そして美味しいね、と言って何事もなかったかのように笑顔を向けてくると同時にココアを返してくる。
…地味に結構減ってたのがショックだった。
気を取り直してココアを飲みなおそうと思いハッ、と気付く。

(……これって関節キス…)

…意識すると急に恥ずかしくなる。
もしかして彼はこういうの気にしないタイプだろうか?
俺は物凄く気にするタイプなんだが。
(皆に潔癖症とよく言われるがそんなことないと思う)

「もしかして飲みかけって嫌なタイプ?」
「いや、関節キスが苦手っていうか…ね」
「ふーん…関節じゃないキスもしてみる?」
「えっ?」
「ガラス抜きのキス」

ガラス抜きのキス、つまりはそういうこと…だと思う。
そんな大胆な……!

「はは、冗談さ」
「…君は時々冗談なのか本気なのかわからないね……」
「でもこれくらいはいいだろう?」

そうしてまた純情なふりして中では何を考えてるかわからない笑みを俺に向けるんだ。







(いきなり彼に手を繋がれた!本当に一体何を考えているんだ!)

「あなたの手は冷たいな…僕が暖めてやろう」
「いや……遠慮するよ」
「はは、そう堅くなるな」





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まんまとヘッドとの関節キスをゲットしたスガタ←
とりあえずホットココアの話が書きたかった(笑)


あきゅろす。
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