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この一瞬さえも
最近新しい日課が出来た。
夕方になると高台の夕日が見えるところに一人で行くのが新しい日課だ。
そこには決まって彼がいる。
(あなたがいるからこれが日課なんだ)

「やあ、また来てくれたね」

僕に気付いた彼は嬉しそうに目を細めると、その視線は色鮮やかな絵の具で塗り潰されたキャンパスへ戻る。
彼の隣に座ってキャンパスを除き見ると、絵を書いてると言っていただけあって素晴らしい出来の水彩画が見えた。

「上手いな」
「ふふ、ありがとう」

熱心に右手を動かしている姿はまさに絵描きそのもので、これもあなたの一部なんだなと実感させられる。

「僕の友達の父親も絵描きらしいんだ」
「君の友達の……かい?」
「ああ…でも僕はこの絵が好きだな」
「……そうかい?ありがとう」

少し照れたような、意味ありげな笑顔を尚もキャンパスに向け続ける。
一瞬でもキャンパスが羨ましいと思った自分が恥ずかしい。
その顔で僕を見てくれればいいんだが…なんて。

「絵、楽しいか?」
「そうだね…君は何か楽しいことはないのかい?」
「僕は最近つまらないことが多すぎて少し退屈だ…」
「そうか…つまらないと感じているのは君が満たされているからだよ」
「満たされている…か」

確かにそうかも知れないな、と一人納得。
今この瞬間がまさに楽しくて満たされているのだ、きっと今満たされているから普段退屈で仕方ないのだろう。
一秒でも早くこの空間に来て過ごしたいと思いながら過ごす毎日は退屈で退屈で仕方がない。
逆にこの時間は一秒でも長くあってほしいぐらいに楽しい。
もっと彼のことを沢山知りたいと思うと自然にこの場所へ脚がうごいている。
最初は同じ時間を共有していたいだけだったのに、彼のことをもっと知りたくなって来たり、僕の名前をあなたは知っているけどまだちゃんと名前で呼んでもらったことがないな、なんて段々欲が深まっていく。
僕はわがまま、なのだろうか。

(そういえばまだあなたの名前すら僕は知らないのに、あなただけ僕の名前を知っていて僕だけあなたの名前を知らないなんて少し不公平だ)

「満たされているのはあなたといるからかな」
「…どうしたんだい?急に」
「………」
「……スガタ君?」
「やっと名前、呼んでくれたな」
「………おかしな人だね…」

眉を潜めてふい、とまたキャンパスとにらめっこ。
だが夕日に染まった中でもほんのり頬が赤く染まったのを見逃さなかった。
ふと凄く美しく思えて、僕の口からはため息が漏れる。

「…綺麗だ」
「夕日がかい?」
「…いや、あなたが……」
「…え?」

驚いてこちらを向いた彼に不意打ち、半開きの唇にキスを落とす。
閉じようとする口にすかさず自分の舌をねじ込んでやると華奢な体がビクッと跳ねた。
細やかな抵抗のつもりか力ない手が僕の肩を押した。

「…んっ……ぁ……!」
「はっ……どう?」
「っ、どうって……!」
「…嫌だった?」
「それは……」

思わず顔を赤くして言葉に詰まる彼が可愛らしくて、もう一度口付けを落とす。
今度は抵抗されなかった。





この一瞬さえも





(もっとこの時間が続けばいいのに)





.
初スガヘ、ほぼ想定←
しかもとりあえずスガタもヘッドも一人称覚えてない(笑)
とりあえずヘッドをもっと知りたくて仕方ないスガタに萌える←←
しかしまあ私の書くスガタはエゴイズムぷんぷんである(笑)


あきゅろす。
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