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泣き虫姫と強がり王子

疎外感。
皆から、邪魔にされているような、必要とされていないような疎外感。
親代わりだったグレイスはどこかへ行ってしまった。
歌うのが好きで歌っていた歌は歌う場所を無くしてしまった。
今の私には何が残っているだろう、部屋の隅っこでうずくまって、意味もなく小さくすすり泣く。
部屋の隅っこなのは誰にも見られたくない、なんて隠れた見栄だろうか?
こんな見栄、本当はトンカチで砕けちゃったらいいのにね。

「…シェリル?」
「……、」

ふと聞きなれた声が耳に入る。
いつでも自分を特別扱いしなくて、それでいて時に優しく気を使ってくれる。
顔を上げると、そんな彼の姿が目に映る。
あぁ、見られちゃった。

「アルト…」
「おま…何泣いてんだよ……」

心配したように頬に手が伸びて来て親指が頬の涙を拭い、端麗な顔の眉が小さく下がる。
ひとつひとつの仕草が渇いた心に染みて、余計に涙が溢れだす。

「なんでも…ないっ……」
「なんでもない奴が泣くかよ」

頭をぽんぽんと優しく叩かれ、子供をあやすような口調でどうしたんだ?と囁かれる。
子供扱いしないで欲しい、そう思ってもその優しさがやっぱり嬉しくて、噴水のように止めどなく涙が溢れだす。
ああ、なんてカッコ悪いんだろう…よりによって、こいつの前で泣くなんて。

「私、私……」
「うん」
「どうすればいいか…わからないの…帰る場所も……何処にもない……頼れる人も…誰もいない…一人は……もう嫌よ……」

押さえようのない想いが言葉になって溢れだす、悲しいのに何でこんなにお喋りになってしまうんだろう。
苦しくなって息を吸い込む度に、涙と想いが口から零れてく。
綺麗に塗った口紅も、マスカラもぐちゃぐちゃになって手についてる。
今の私って凄いブサイクな顔してるかも…。

「一人じゃ、ねぇよ」
「ふ…ぇ……?」
「俺が、いるだろ?」

俺の隣にいて、俺の隣に帰って来ればいい。
そう言った時のアルトの顔が普段とは違って馬鹿みたくかっこよく見えて、身体中が火事なんじゃないかと思うぐらい熱くなって。
嬉しいはずなのに、胸がキュンと締め付けられて苦しい、苦しい。

「アル、ト」
「大丈夫…お前は一人じゃないよ」

気付いたら私はアルトの腕の中。
心臓は破裂するんじゃないかってぐらいバクンバクン。
きゅっと服を握り締めるとアルトはそれより強く抱き締めてくれる。

「俺がずっと一緒にいる」

そう言われた途端頭の中がメリーゴーランド。
ぐるぐる回ってハッピー何だか悲しいんだかわからなくなっちゃった。
そのうちメリーゴーランドに乗った私をアルトが迎えに来てくれるんだ、それで一緒に乗ってくれて、まるで白馬の王子様みたい。
でもそう考えると私は今ハッピーなの?
白馬の王子様は、ずっと一緒にいてくれるのよね?
私はもう一人じゃないのよね?




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