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長い旅路



日が登ってこんにちは、月が出てからこんばんは、明日会えるまでさようなら、一つ二つ三つと歳を重ねならがら繰り返されるこれはきっと死ぬまで続くのだ。
本当はあの時、妹と共に手をとり、平和の使者でも名乗っていれば文字どおり「王」として崇められたのかも知れない。
でもそれは違う、きっと自分ではないのだ。
復讐を誓ってしまった時からどこか道を踏み外したのだと気付いたのはいつになってからだったか。
妹の理想はきっとよい導きになるだろう、自分とは違い理想ではなく、現実に出来るだろう。
小さい?大きい?夢の大小なんて関係ないさと石ころを蹴り飛ばす。

「泣いてるのか」
「…まさか」
「ならば、何故そんな顔をする」

いつの日か見た夢がある。
いつの日かもう一度、父と母と、妹とまた共に歩むことが出来たのなら
青いグラスをカラン、と傾けアルコールのキツい酒を口元へ持っていく。
夢は所詮夢なのだ、夢を見続けていられるのならばずっと眠っていることを選ぶのに。

「お前が聞くことではない」
「…酒は飲みすぎると体に悪いぞ」
「…酔いたいんだ」

ひょい、とグラスを取り上げられたかと思うと残りを全て飲み干してしまった。
15歳の少年がなんてことを!と思いつつ自分もまだ成人していないことに今さら気付く。
飲み干した割には酔っている気配はなく、寧ろケロッとしている。

「…夢を見ていた」
「起きているのにか」
「……ああ」
「ゼクス」
「どうした?」
「……眠そうだ」
「酔いが回ってきたのかも知れん」
「…ゼクス」

急に見つめてくる真剣な青い眼差しが二つ。
見つめ返しているとさらに視線がきつくなる。
これでは笑えないにらめっこだ。
しばらく見つめあってから段々と眠気に襲われてくる。
強いといっても大量に摂取された酒には勝てなくて、瞼が下がってつい、うとうとしてしまう。
うとうとしているところに手がスッと伸びてくる。
眠たげに視線を向けると、ゆっくりと彼の顔が降ってくる。
言葉を発しようとしたら、唇を塞がれた。

「……ん、はっ…」

抵抗する気もなくだらだらと身を任せていると、口づけが深くなる。
段々と気持ちよくなってきて、眠たげな瞳がトロンと情欲を帯び始める。

「ゼクス」
「ん……?」
「俺は今でも迷子なんだ」
「…そうか……」
「お前も、迷子なのか?」
「迷子…そう、なのかも知れないな…」

本来ならばもう死んでしまっているハズだった。
それなのにズルズルと延命して、未だに未来を描けず行き続けている。
導が見つからない、お互い何かを埋めるようにもう一度、口づけを交わした。



長い旅路










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