ジタクジャ
日数が立つに連れて魔力はだんだん弱くなっていって、体力も落ちてきてる。
とうとうベッドから起き上がることすら辛くなってきた。
日に日に何かも消えていくような気がして、死ぬってこういう事なのか、と感じる度に一人怯える。
徐々に苦しんで死んでいくんだ、きっと自分にはお似合いだ、クジャは自虐の笑みを浮かべる。
「惨めだ」
「は?」
「…いや」
最高に惨めだ。
ガイアの民を虫けらのように扱ってきた自分が、このざまだ。
プライドなんて等の昔にずたぼろだ。
(もう嫌だ)
(こんなの生き恥だ)
(早く死んでしまいたい)
(でも死にたくない!本当は生きたい、)
「クジャ」
「…なんだい」
「体調はどうなんだ?」
暑くもなくて、寒くもなくて、緩やかな風が吹く穏やかな午後。
自分とは違って優しい弟。
人間らしくて、生命の伊吹を感じる。
その弟がストレートに向けてくる好意。
「嫌いなんだ」
ポツリ、呟くように、しかしジタンにしっかりと言い聞かせるように放ったその言葉はジタンからしたら聞きたくない言葉だった。
やっと自分の気持ちが言えたのに、何故だが胸がズキズキする。
嫌い?
…嫌い
「…何が?」
「君のことが」
少しだけ自分ではないことに期待を込めて聞き返したらあっさり自分のことだと言われ、複雑な顔をするジタン。
どうしていまさら、確かに前は敵同士だったしジタンもクジャが憎くて仕方なかったけれど、あくまでそれは過去の話。
せっかくわかり会えたと思ったのに、好きで好きでたまらなかったのに、嫌い?
(俺にとってはお前が凄く大切なのに)
(どんなに時間をかけても俺のこと嫌い?)
(どんな女でも落とす自信があるのに、どうしてかお前だけが思い通りにならないよ)
思いがいつも空回り、風が優しく二人を撫でる。
綺麗な銀色がふわりと風に舞った。
(こんなにもお前は綺麗で)
「どうやったら好きになってくれる?」
「どうやっても好きにならないよ」
「なんで」
「なんでも」
「だからなんで、」
そんな不毛なやりとりがひたすら続いて、飽きてきたのか終わらせたいのか、クジャは違う言葉をぽつりと放つ。
「だから、早く僕を嫌いになって」
儚げな表情を浮かべ、いつの間にやら右手にナイフ、
(まさか)
「僕とキミじゃ不釣り合いだ」
「やめろ…!」
ジタンとクジャ以上に劈く悲鳴と静かな風がその場に全く不釣り合いで、飛び散った赤は鮮やかな色をしていた。
(こんなにも愛しているのに)
(お前を助けられなかった)
(だけど俺は気付いてたよ)
(そうやって、決まって俺に嘘つくんだ)
(お前は隠そうとしてたけど)
(笑いながら泣いてたこと)
だから自分もと涙を流した。
嘘じゃない、本当の涙を流した。
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