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捕まえてくれるなら


好きになったら駄目だって、頭の片隅に小さな警告音。
本当は兄弟として好きになれればよかったのに最初に抱いた感情は汚いものばかりで。

「俺のこと好きになっちゃいなよ」

僕の体を両手で抱きしめて離さずに下から見上げてくるニヤリと浮かべられた笑み、なんて憎たらしい!

「お前の帰る場所がさ、俺だったらいいな」
「僕に帰る場所なんてないんだ」
「だから俺がなるんだよ」

何を言っても通じないのかこの男は!全部勝手に右から左に流して好き放題、僕の意見はまるで無視。
こういう自由奔放なとこは好きになれない、昔から好きではなかったけれど。
いつもいつも僕の邪魔ばかり、きっと今だけじゃなくこの先もずっとずっとつきまとって来るんだ、考えるだけで嫌気が指す。

「クジャ」
「…なんだい」
「俺のこと嫌いか?」
「嫌いだよ、大っ嫌い」
「……嘘だね」

一度真剣な顔つきになったと思ったらそこでまたニッとサルみたいな笑い方をする。
嘘なんて、ついていないハズなのに。
(本当は好きなんだけれど)
(絶体言ってなんてあげない)

「どうしたら好きって言ってくれるんだ?」
「僕に言って欲しいのかい?」

コクリと頷いた彼の頭を優しく撫でる。
すると嬉しかったのかなんなのか、子犬のような目で見上げてきた。
手の平でそっと瞼を落としてから腕の中からするりと抜け出すと、不安そうに目を開けたまま立ち尽くすジタン。
(失うことがそんなにも不安かい?なんて可哀想!)
(僕にはもう失うものなんてないけれど)

「クジャ?」
「言ってあげようか?」
「…、えっ?まじで?」
「そのかわり、」



捕まえてくれるなら



悪戯な笑みを浮かべてひらりと逃げる。
きっともうすぐ満面の笑みを浮かべた彼が捕まえに来るんだろう。
(絶対に捕まってあげないけどね!)





あきゅろす。
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