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茜色の空、夜が迫る

うっすらと光が消えていく、何もかもがこの手をすり抜けていった時、手に入るものなど何もないのだと知った。


茜色の空、夜が迫る


大事なものはどこかへ置いてきた。
ガラス玉のようにピカピカ光る宝物は手に入れた瞬間、見えなくなった。
開けた箱はパンドラの箱、それ以下。
知ってよかったものなど一つもなかった!

「死ぬのか」
「…もうすぐいくよ」

ぽつりと呟いた言葉に音はなく、色もなく。
死を間際にして、自分などちっぽけなものだと悟る。
未来に託すものもなく、過去から受け継いだものもなく

(僕が産み出した命は、未来へ繋げるのだろうか、)

「…精々笑えばいい」
「…笑わねぇよ」
「…、そう……」

同情もなにもいらないのに、茜色の空はいっそう黒を増してくる。
そう、黒の名前はたしか暗闇、これから僕がいくところ。
おかえり、ただいま、僕の未来、そして終わり。
もうなにも考えなくていい、生きるという意味も、存在という虚像も

(本当は最初からなかったじゃないか!)

「お前は」
「…なぁに、辛いからあまり喋りたくないんだけど……」
「一人だと、思い込んでるかも知れない」

でも、俺はお前が大切で、たった一人の兄で、大好きだから
出来ればずっと傍にいてほしかった、こなったのは自分のせいかも知れないけど
だから、お前を愛した人がいたということを忘れないで
後何年立っても、俺のなかに深く深く刻むよ

「ジタン、」

突然の風に攫われるように君は僕とは離れた道を行った。
希望なんてものは、最初からなかった。
うっすらと意識が遠退いていくなか、それでも最後に、ひとつだけ
君の涙でぐしゃぐしゃな顔と、慈しむような口づけを手に入れました

「クジャ…?」

そうやって また きみは、



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