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6月13日


拝啓 石田三成

きっと僕が死んだら君は悲しむだろう。
こんな時代じゃなかったらと思うだろう。
でもそれはきっとつかの間の悲しみだ。
どんなに悲しくてもいつかきっと忘れてしまう、そして僕の知らない誰かと結ばれ、僕の知らないところで過ごすんだろう。
僕のしらない人と結ばれるのも忘れられてしまうのも凄く凄く悲しいけれど、僕には未来がない。
秀吉の天下を見ることも出来ないだろう。

運命が違かったら、僕に病気なんてものがなかったらといつも思う。
きっと君がこの手紙を読んでいるときはもう僕はこの世にはいないハズだ。
それでも悲しまないでほしい、もう僕自身死が近いことを薄々感じていたんだ、何もしないでもきっと死んだ、なら戦で死ぬのが本望さ。

最後に、こんな形の別れになってしまって申し訳ないと思う。
どうか僕の代わりに秀吉を支えてあげてほしい


敬具 竹中半兵衛


「──半兵衛様、」

手にした手紙がくしゃり、と掌で音を立てた。
涙が三成の頬を一筋伝い、ひたひたと地面に落ちる。

三成は人生で今初めて泣いているのだ。
自分が師と定め、それ以上の愛しいという執着した感情を初めて抱いた大切な者に先ただれ、涙をとめどなく溢れさせている。

(本当はこの涙は、半兵衛様を失って泣いているのではなく
半兵衛様を失って傷付いた自分を哀れんで泣いているのかも知れない)

いいや違うと奥深くの自分自身に言い聞かせる。
でも本当はそうなのかも知れない。
この涙は傷付いた自分が可哀想で可哀想で自分の乾きを嘆いているのかも知れない。

(半兵衛様、私は一体どうすればいいでしょうか)

半兵衛がこの場にいればもう泣くんじゃない、と優しく慰めてくれたかも知れない。
けれど彼はもうこの場所にいないのだ。
母のように導きを与え、愛を与えてくれた女神のような存在はもう三成の知らない世界に旅立ってしまったのだ。

死後の世界とはどのような場所だろうか?
白く、何もない世界だろうか?
花が咲き乱れ、自然に溢れた美しくしい世界だろうか?

(導いてください……半兵衛様………、)

世界が暗くなったような気がした。
自分はこれから何のためにどのように生きていけばいいんだろうか。

(秀吉様をお守りするのは当たり前でしょうがそれ以前に私は貴方をお守りしたかった)


(なのに!)


ぽたぽたと外から雨の音がした。
今は梅雨だ、しとしと静かに降る雨も三成にはただの雑音でしかなく、まるで自分の脳内かのような雨音に震える体を抱え込んだ。



6月13日




(私は貴方を失ってしまったらどうすればいい)
(貴方がいなければ辛くて辛くて)

道を踏み外した子羊は歩むということを忘れてしまった。
暗闇は広がるばかりだ、貴方はいつ手を差し伸べてくれるだろう。



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