何かの嫌がらせ？
朝起きた、寝坊した。
一緒に住んでる妹はとうの昔にいない。
起こしてくれればいいのに…とぼやきながら急いでマンションから飛び出し、走って学校へ向かう。
が普段からろくな運動もしていないスーパーひょろもやし男子のカリアンにそんなに体力があるハズもなく、走って30秒で疲れてしまい、ひぃひぃとなっている。
表現的には別の意味のひぃひぃもあるがけしてえろっちい方のひぃひぃではない。
そっちの意味のひぃひぃだったらある意味彼をひぃひぃ言わせた人を尊敬したい。
いや、別の意味で今ひぃひぃ言ってるが…まあ面倒だからもうひぃひぃと書くのはやめよう。
「あ、会長！」
「あー、こんな時に…」
目の前にニーナ・アントークが笑顔で現れた。
RPG的なノリで言っている訳ではない。
正直言って顔には出さないがカリアンにとってはレイフォンと同じくらい会いたくない相手だ。
生徒会長という職分以上どんな生徒でも臨機応変にニコニコ笑顔で対応しなくてはならない。
例えオープンな腐女子の小隊隊長でも、実はスケベだった腹黒元天剣術者でもだ。
嫌いな奴に対しての嫌悪を露に出来ないのが生徒会長の辛いところだ。
表情に出せないのが一番辛い。
しかし本人は気付いてないようだかばっちり表情に出ている。
何が彼をそんな子にしてしまったのだろう。
「会長、私も今から登校なんですよ！一緒にどうですか？」
「いや、私はゆっくり行くから…」
「今走ってたじゃないですか」
「あ、アレはだね…」
余計なとこまで見てるもんだ。
そして無駄に元気だ。
どうでもいいがニーナが手に持っている怪しい瓶はなんだろう。
凄い突っ込みたいがなんだか突っ込んではいけない気がする。
言っておくがこの突っ込みたいも決してエロい意味ではない。
「ところで会長、丁度よかったです」
「はい？」
「えいっ」
「なっ！？」
は？という感じの顔をしていたらニーナが瓶の中身をカリアンにぶっかけた。
やっぱり言っておくがエロい意味のぶっかけたではない。
間違えないように。
そしてボワン、となんともメルヘンチックな音と共にカリアンはピンク色の煙に包まれる。
ニーナはなんだか嬉しそうだ。
気のせいかと思ったがやっぱり気のせいかではない。
顔がニヤニヤしている。
「な、何をし…！？」
かけられた後、口達者なカリアンはすかさず反論をしようとしたが胸に違和感。
下を見るとなんという事でしょう、胸が出ている。
まるで女の子…というか女の子。
生徒会の服のボタンが今にもはち切れそうな程に胸が大体に服を押し上げている。
しかも大きい。
そしてそれに対し腰は前より細くなり、ズボンは腰周りだけぶかぶか、お尻周りだけきつきつ。
ぶっちゃけ元々ひょろいもやしだったのでそこはあまり変化がないように見えるが。
所謂ボンッキュッボンッ。
まさか自分がなるとは。
それよりなんだコレ。
まさか本物？だとしたらもっとなんだコレ。
「成功ですね会長？」
「は？成功って何が…」
「性転換です！いやぁしかし大きいですね」
何が大きいって多分この無駄に大きい胸だろう。
ニーナはGはあるんじゃないですか？と凄く楽しそうだ。
性転換ってあの性転換？
ニーナから渡されたさっきの瓶を見ると確かに性別変換薬品と書いてある。
いつの間にこんな危ない薬品が出回っていたんだ、後で薬局の商品を見直さなくては、と違う事を考えるカリアン。
「さぁ会長、その恥ずかしい姿でツェルニを練り歩いてください！」
「は…？ど、どういう意味かな？」
念のため聞いたのだかニーナが言うにはこうだ。
会長を女の子にしたらきっと可愛い！と。
そしてその女の子になったカリアンが恥ずかしそうに歩いているところを見たいらしい。
ついでにヴァンカリを見たいらしい。
カリアンはそれを聞いては？と首を傾げる。
この「は？」本日何回目だろうか。
自分にそんな事をさせるなんて何かの嫌がらせとしか思えない！と腐女子心をさっぱり理解出来ないカリアン。
いや、それが当たり前なのだが。
「か、会長…！」
ニーナの後ろから嫌な人物の声。
そう、実はスケベだった腹黒野郎のレイフォンだ。
どうでもいいがレイフォンファンはこの文を見ないでほしい。
今更だが。
いや、ここから大変な事になりそうだからあえてだ。
「凄いです先輩…本当に成功したんですね！」
「あぁ、そうだ！喜べレイフォン、これで二穴で出来るぞ！」
何か今怖い単語が聞こえた。
とりあえず二人が恋人のように楽しそうに会話している間にさっさと逃げよう。
うんそうしよう。
こそこそと後退りしていくカリアン。
しかしあっさり見付かりいつどこで覚えたのかさっぱりわからないレイフォンの捕縛術の縄により簡単に捕まってしまった。
あれ、この縄って警視庁しか持っていけない気が…
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