苦しみは受けとめて
いつだかファフナーと俺達、どちらが大切か聞いた事があった。
「ファフナーだ」
薄々分かってはいたけど、それでも俺は傷ついた。
──少しでも俺が大切だと言ってくれれば
苦
し
み
は受けとめて
「一騎…?」
肩を掴んで、壁に思いっきり押しつける。
「いっ…」
痛みに歪む顔に小さな疼きを覚える。
──俺の苦しみも知らないで
お前を恨んでるんじゃない、多分。
だけど、時々総士が何を考えてるか分からなくなる。
「…ごめん」
こんな事したい訳じゃなかったんだけど。
でもなんとなく、苛々した。
俺の気持ちを分かってくれない事に。
「…もう用は済んだのか」
「…っ」
自分にもう用件はないのかと。
あまりにも、冷たい言い方なんじゃないか。
──人の気も知らないで
「お前は人の神経を逆撫でするのが得意だな」
「…それはどうも」
いつだって総士は冷たい。
俺の予想しない言葉を言う。
「そうやって翔子も甲洋も見捨てたのか」
二人ともファフナーに乗らなければ、普通に暮らせていただろうに。
「…そうだ。だがあれは自分自身が招いた結果だ」
そう言った時の顔は何故か辛そうで。
もしかしたら、総士も辛いのかも知れない。
「…ご、めん」
「何で謝る」
俺の気持ちばっかり押し付けて、総士の気持ちは何にも分かろうとしていない。
結局、いつも俺達はすれ違ってばっかりで。
「お前の事ばっかり攻めてるな、俺」
何にも分かってないのは俺の方じゃないか。
分かろうとしないから分かってもらえない。
いつも痛みを背負っているのは、総士だ。
「ごめんな…」
「お前のせいじゃ、ない」
「総士…泣くなよ…」
「泣いて、なんて」
頬から伝う涙を拭って、華奢な体を抱き締めた。
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