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喪失のジェミニ
事実を思い知らされた時に思ったのは驚きや悲しみより、喪失感。
何で自分がレプリカなんだろう、俺はちゃんとした人間じゃなかったのか。
考えれば考える程怖くなって、自分が何だかわからなくなった。

俺はこんな感情なんて、知らない。

「不安、なのですね」

俺がその感情に気付いたのはジェイドの一言から。
悲しみや驚きでもなんでもない、不安。

そう、不安なんだ。

俺は今までこんな事なかったから、急にその状況に直面して不安になったんだ。

「なぁ……俺どうすればいいんだ…」

俺の今まで場所は俺の本当の場所じゃない。
本物そっくりに、ただの真似事をしながら生きていなければならない。
周囲からの冷たい視線は俺にとっては心を傷つける凶器。
怖くて怖くてたまらない、逃げたい。

「なぁ…」
「落ち着きなさい…」

どうやって落ち着けって言うんだよ。
なぁ、俺を産み出した技術を作ったのはジェイドなんだろ?
どうにかしてくれよ、どうにか。
いつ俺の居場所がなくなるか不安なんだよ。
いつ俺が不定されるか不安で怖いんだよ!

「怖いんだ…助けてくれよ……」
「ルーク……」
「助けてくれよ、助けてくれよ!」

叫んだって、何も変わらないのに。
分かってるハズなのに涙も叫び声も止まらない。
不安って、怖い。

「何で、」

何で助けてくれないんだよ。
俺を慰めるくらいなら助けてよ。
この苦しみから俺を救えよ。
卑怯だ、いつもいつも俺から逃げて。

「ルー……クっ!」

憎い、憎い憎い憎い。
俺を苦しめているのが、ジェイドのせいなのが。
本当は違うけど違わない、分かってるのに、責めてしまう。

「……く、」

自然と力を入れた手は白い首を締め付ける。
何もかも、なくなってしまえばいいのに。

「ぅ……はっ…!」

俺が不安なのも、苦しいのも。
全部全部、ジェイドのせいなんだ。
こんな事したい訳じゃないのに、体は勝手に力を込める。
俺のせいじゃない、そう言い訳して逃げても現実は何も変わらなくて。

「…あっ」

───殺した?


俺が殺した?


「ジェイド……?」

いつも白い顔は、生きた白さではなく死人のように青白い顔になっている。

どうしよう、またこうやって人を殺めた。

自分が気に入らないものは目の前から消して、いつも後悔するのは自分。
現実と向き合わないでただ何かにあたる事しか出来ない。
今さら気付いたって遅いんだ。

結局、いつもジェイドから逃げてたのは自分じゃないか。






ジェミニは確か双子って意味だったと思います
…しかし暗い…(笑)


あきゅろす。
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