[携帯モード] [URL送信]
遠くない未来

スゥっと空気を吸い込んでシンジは目を閉じる。
夏にしては冷たい風が吹き抜けて、ひょうひょうと風の音が耳をくすぐる。
目を開けるとカヲルの白い肌を赤い光が照らしていた。

「僕がカヲル君に初めて会ったのはここだった…」
「そうだね…」

二人して見つめ直すと、過去の記憶が今でも鮮明に蘇る。
初めて交わした言葉、初めて見せた表情……そして彼は初めて恋した相手

「僕は今でも覚えてるよ…カヲル君が初めて言った言葉」
「歌はいいね、だっけ?」
「そう、それ」

こうしていると色々な事を思い出す。
一緒に過ごして来た日々の中の些細な出来事から驚くような出来事まで全部、勿論恥ずかしいことも何もかも。

「ねぇカヲル君…初めてのキス、覚えてる?」
「…覚えてるよ、その後もね」
「それはその…ごめん」

初めてのキスの後、初めての行為、普通の人間なら汚らわしいこともカヲルは受け止めてくれた。
やっと受け入れてくれる人を見つけて、その時シンジは嬉しさのあまり泣きながら行為に及んだのを覚えてる。

「シンジ君、いきなり泣き出すから驚いたよ」
「だっ、だからごめんって…!」

必死に謝るシンジが面白くて、悪いなと思いつつもカヲルはふっ、と笑ってしまう。

「わ、笑わなくたって…」
「ごめんごめん」

悪気もなく謝るとどことなく笑みは寂しそうな表情になる。

(さっきまで笑ってたのに、)

何か悪いことをしてしまっただろうか?あんまりに辛そうな顔だったから、心配で心配で

「カヲル君…?」
「ねぇ、シンジ君」
「…何?」
「君と過ごした日々、楽しかった」
「……カヲル君?」
「何も知らない僕に沢山のことを教えてくれた…ねぇ、これからずっと先も……一緒にいてくれるかい?」
「…当たり前じゃないか」

急におかしなことを言い出すもんだから胸の奥が不安で渦巻いて、キュッと苦しくなる。
横目でカヲルを除き見ると、白い頬を雫が一筋

(泣いてる…カヲル君……)

その横顔があんまりに綺麗で、あんまりに儚げだったから今すぐにでも消えてしまいそうで
細い身体をぎゅっと自分に引き寄せる






(君が僕の前から消えてしまいそうで怖いよ)


(カヲル君っ!!)
(シンジ君?どうしたんだい、慌てて…)
(いるよ…ずっと……君とずっと一緒にいる…)
(……、ありがとうシンジ君…嬉しいよ)





.
初めてを前提…になってるでしょうか?(苦笑)


あきゅろす。
無料HPエムペ!