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大切な時間
ミーンミーン…
ジジジジジ…

開けっ放しの窓からセミが鳴いている声が聞こえる、そんなのいつもの事だけど今日に限ってその鳴き声が耳について苛々する。

なんで苛々してるか、時間になっても来ない奴に苛々してる。
人を待たせるなんて渚の癖に良い度胸だ。


ピンポーン…


マンションのチャイムが鳴る。
僕はやっと来た人物に軽い怒りを覚えながらも重い体を持ち上げてドアに向かう。


「シンジくーん?」


ピンポーン…
ピンポーン…
ピンポーン…


五月蝿いなぁ、今出ていくとこだろ、何回も鳴らすなよ…


ガチャ


ドアを開けるとそこには待ち望んでいた人物が立っていて…


「遅い」
「ごめん…」


ドアの前で立ってる渚は片手に買い物袋を下げていた。
そういえば前に料理を教える約束してたから多分それで材料か何か買って来たのだろう。


「シンジ君もっと早く出てよね」
「渚が遅いのが悪いんだろ」
「なにそれ」
「…まあ良いから入れよ」
「うん、お邪魔しまーす」

さっそく渚が上がり込んでくる。
はじめて来たからか、家のそこらじゅうを見回しては珍しげに眺める。


「渚…人の家がそんなに珍しい?」
「シンジ君の家ってこんな風になってるんだと思って」


そういってペンペンが寝てる冷蔵庫にペタペタ触る。


「ねぇ、何で冷蔵庫二つあるの?」
「ああ、こっちの冷蔵庫はペンペンが寝てるんだ」
「へえ…」


そのとき丁度ペンペンが冷蔵庫から出てきた。


「あ、君がペンペン?」
「クワァ?」
「あは、可愛いな」


ペンペンは不思議そうな顔をして渚をまじまじと見つめている。

「渚」
「んー?」
「何買って来たの?」
「えっとね…」


とりあえず袋の中に入ってる物を一個一個取り出してテーブルに並べていった。


「何作ろうと思ってた訳…?」
「パフェだよ。セカンドが前に美味しいって言ってたから」
「へえ…」


並べられてる物は色とりどりのフルーツやお菓子…しかしその中に混じって白菜やキュウリ、さらには味噌まであるのは何故だろうか…


「…材料わかってる?」
「え?もしかして違う?」


何故材料もわからずにパフェを作ろうなど思ったのだろうか。


「パフェがどんなのかわかってる?」
「白くてカラフルでポッキーとかが刺さってるやつだよね?」


大体はあってる。
多分カラフルの時点で選択を間違えたんだろう。


「あのさ、パフェっていうのは」
「じゃあさっそく作ろう!」


僕の話を聞かずにスタスタとキッチンに向かいエプロンを身に付けはじめる。
いったいそのエプロンは誰にもらったのか…


「まずはどうするの?」
「そうだな…果物を切って」
「わかった」


そう言った途端、渚はキュウリを手に取り右手の包丁でザクザクと切り始める。
その手つきは見てるだけで危なっかしい。

その前にキュウリは果物じゃない…!


「包丁の使い方おかしいよ。それだと怪我する」
「え、そうなの!?」


やっぱり知らなかったか。
まずは包丁の握り方から教える必要がありそうだ…


「包丁はこうやって使うんだよ」
「へえ…」


教えたは良いがまだ渚の包丁の使い方はおかしい…


「痛っ…」


言わんこっちゃない、指を包丁で切ってしまったらしい。
それでも包丁を握りまた作業を再開し始める健気な渚にちょっと胸が痛む。
ああ、見ていられない。


「渚…もう良いからあっちでおとなしくしてろ」
「うっ…わかった…」


渚は口を尖らせながらキッチンから去って行った。
機嫌を悪くしたんだろう…後で謝っておこう。


―数時間後


二人分を一人で作ってたからか、思ったより時間がかかった。
まあこれで渚が喜ぶなら時間なんて惜しくない。


「渚、出来たよ」


キッチンから大声で渚の名前を呼ぶ。
返事がないのは何故だろう…


「渚」


ちょっと心配になりパフェを持ってリビングまで行ってみると、ペンペンと一緒に床の上ですやすやと寝息をたて眠る渚を発見した。
不覚にも寝顔が綺麗だと思ってしまったのは言わないでおこう。
パフェをテーブルに置き、渚を起こすとちょっと不機嫌そうな顔でおはようと言われた。


「出来たの?」
「そこに置いてあるよ」
「これがパフェかぁ」


まじまじとパフェを見つめて突き刺さってるスプーンでパクっと一口。


「美味しいっ!」


パクパク…渚の手は止まる事なくパフェを口へと運ぶ。
夢中で食べる渚はやっぱり単純だと思いつつも可愛いと思い後ろからそっと抱き締める。


「シンジ君…」
「何?」
「食べれないんだけど…その、離れてくれない?」


照れながら言われてもどっちなんだか。


「じゃあ食べさせてあげようか?」
「べ、別にいいよ」
「はい、あーん」
「…」


赤面しつつも僕の差し出したスプーンでちゃんと食べてくれるのは渚らしい。


「…いつまでこうしてるの?」
「もう少し」


ちょっと呆れた目で見られたけど、こうしていると渚の体温が伝わって来て、渚の存在を確かめられて凄く幸せ。
さっきまで苛々していた時間が、幸せな時間になるなんて思いもしなかった。


「今日はこのままでいたい気分なんだ」
「…好きにすれば」


end.




すすすすすいませ…(汗)
甘く…ないですね(´Д`;

リクエストをいただいて時間がたってしまってすいません(汗)
これで良ければもらって下さい〜


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