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好きだったのに
「あら、フィフス」
「ああ、君か」


カヲルは自販機コーナーのベンチに座って缶コーヒーを飲んでいたところだった。


「どうしたのよ、こんな時間にこんなとこで」
「眠れなくてね…君は?」
「私も同じよ」


アスカはカヲルの横に座り、さっき買ったジュースの缶を開けて一気に喉に流し込む。


「ぷはぁ!」


その様子をまじまじと見つめるカヲルに気付き、不思議に思い尋ねると「いや、何も」と言ってどこか遠くを見つめだす。
何だかいつもと違う。


「そうだ、外出てみない?」
「外?」
「今日って月が綺麗じゃない、一緒に見ましょうよ」
「月…そうだね」


二人はネルフ私設内から出て、近くの広い野原に来た。
ごろん、とアスカは草むらに寝転んで広い空を見渡した。


「あんたも寝たら?」
「僕は座ったままで良いよ」
「そう」


そのまま長い沈黙が続く。
沈黙が続けば続くだけ話づらくなる。


「ねぇ」


沈黙に耐えきれなくなり、アスカがポツリと口を開いた。


「あんた何でエヴァに乗るの?」
「さぁ、何でだろうね」
「はぁ?あんた自分で訳もわからず乗ってる訳?」


呆れた顔と呆れた口調で放った言葉はちょっと嫌味な感じだった。


「運命なんだ」
「へ?」
「僕がエヴァに乗る事は偶然じゃなくて必然、つまり最初から決まっていたんだ」


悲しげな目でおもむろに月を眺めだすカヲル。
月に、何かあるのだろうか。


「エヴァに乗るために生まれたっつーの?」
「そう、だね」
「はん、バッカみたい」
「もっと別の目的の為に生まれたんだけどね」
「は?」
「何でもないよ。君こそ何故そんな事聞くんだい?」
「別に…バカシンジもファーストも意味があって乗ってるのにあんたにはないのかなって、少し気になっただけ」


ついでに異性てしても、と言おうと思ったけどやめた。


「じゃあ、僕はこれで」
「あのさ」
「なんだい?」


好きなの、何て言えるキャラじゃない。そんな事言ったらアスカ自身恥ずかしくて死んでしまいそうだ。


「…なんでもないわ」
「そう、じゃあさよなら」


さよなら、最後に聞いた言葉。
何でさよなら?
アスカは変な疑問をうけつつカヲルにひらひらと手を横に降って別れを告げた。
翌日、使徒が現れた。
アスカはたまたま現場にいなかったため、相手の使徒がどんな使徒かわからなかった。
ミサトの話によると、使徒はシンジの手により殲滅されたらしい。

次の日、アスカはひっそりとカヲルが来てる事を期待して学校へ行った。
しかしカヲルの姿はない。
その次の日、またその次の日、一週間たってもカヲルは姿を見せない。
カヲルの座っていたハズの席は、カヲルが最後に学校に来たとき以来ガランとし、もの悲しげにたたずんでいる。
心配になり宿舎にも行った。
カヲルからあらかじめ預かっておいた鍵でアスカは難なく部屋に入る事が出来た。
しかし部屋にはカヲルはいない。
部屋の家具はそのままなのに、肝心の主がいない。
もぬけの殻なのだ。
まるでそのまま消えたように。


「あいつ…何してるんだろう…」


アスカはカレンダーを見てため息をついた。
カヲルの姿を見なくなって、早一ヶ月。
その間に使徒との戦いは進み、アスカの友人のヒカリも疎開して行った。


「誰も…いない…バカヲル…早く出てきなさいよ…」


アスカは枕をギュッと握り泣きながら呟いた。


「アスカ?」


ずっと部屋にこもったままのアスカを心配したのか、シンジがアスカの部屋を覗きに来た。


「元気…ないけどどうかした…?」
「……つ…」
「?」
「あいつ…どこ行ったのかな」


アスカの言うあいつとは間違いなくカヲルの事だろう。


「…アスカ、カヲル君は、」
「まだ…伝えてない事沢山あるのに」
「カヲル君はね」


シンジの話を聞くそぶりは見せず、淡々と語り始めれば、急に泣き出す。


「さよならって言ったきりずっと見かけないのよ」
「…んだんだよ」
「どこに言ったのかな…寂しいのよ…あいつがいなくなって」
「アスカ」
「早く…帰って来な「アスカ!」


アスカの話を聞いていられなくなり、シンジがその場で叫んだ。


「…何よ!」
「いないんだよ…もう…」
「はぁ?あんた何言って」
「カヲル君はもういないんだよ!」


アスカはベッドから抜け出しシンジの胸ぐらをつかみ拳を上げた。


「デタラメ言うんじゃないわよ!あんたふざけても言って良いことと悪い事ってのがあるでしょ!?もう一度言ってみなさい!殴るわよ!?」
「嘘じゃない!」
「嘘よ…!」
「本当だよ」
「嘘よっ!」
「しつこいな、カヲル君はもう死んだんだよ!」
「嘘よ!」


アスカは叫び、その場に崩れた。

「嘘よ嘘よ、嘘よ嘘よ嘘よ嘘よぉぉぉお!」
――嘘だと言って

あいつが消えたなんて

死んだ

もういないなんて

嘘だと言ってよ――


アスカは一日中泣いた。
泣いて泣いて泣き続けた。
生きてる、そのうちまたひょっこりと「やあ」とか言ってにこにこしながら出てくると思ってた。
そう思ってた人物のいきなりの死を伝えられる。

つい一ヶ月前まではぴんぴんしてたのに。


――さよなら


あの言葉の意味はこういう事だったのか。


「何でっ…」


何も伝えてくれずに目の前からいなくなったの?
最初からこうなるなら目前に現れなければ良かったのに。
あの時素直に伝えれば良かった。
そうすればこんな事にならなかったのだろうか?


「うっ…くっ…」
「アスカ…」


ぼろぼろと涙が溢れてくる。
何が悲しくてこんなにも涙が出てくるんだろう。

やり場のない悲しみと憎しみで心が痛い。

ただアスカは泣きながらひとつの言葉を脳内で唱え続けた。


――好き、だったのに








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うわぁぁあ、かなり遅れてしまったうえにこんなオチですいません(泣)
病んで…ないですね(´`;
すいませんすいませんすいませんすいませ(ry以下エンドレス

こんな作品でよろしければもらって下さい(汗)


あきゅろす。
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