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海よりも深い眠りについて13

「あんたはファーストと組めばいいでしょ!」

やるわ、と言ったアスカ。
しかしながらシンジとやる訳ではないらしい。
動きが合わせられないから嫌なのか、それともシンジそのものを嫌っているのかなんなのか。
彼女はシンジとのペアを拒否した。

もしかしてカヲル君と組みたかったから?
…考えすぎか。

結局二人の仲の悪さを見かねてミサトをシンジとレイ、アスカとカヲルのペアに振り分けた。
ミサトもこれが最善だと思ったのだろう。
幼い頃からエヴァの訓練を受けていたアスカ、アスカよりは遅いがそれでも昔から訓練をしていたカヲルに対してエヴァとシンクロしてまだ数ヶ月のシンジ。
…当たり前か。

ミサトはユニゾンが完璧な方を出撃させると言っていた。

綾波と出撃か、悪くはないけどよくもない。
要するに普通。
でもどっちかっていうとやりたくない。
カヲルとアスカが組んでいるのだ。
別に自分がやらなくたってエヴァの操縦が上手な二人がやってくれる。
どうせ自分は用済みだ。
それに、怖い思いはしたくない。

「碇君、やる気はあるの?」
「あ、うん…」

うん、なんて一様返事はしたけど何もしなくていいのだ、訓練なんてやる気もない。
ただぼっとしているだけで、無駄な時間を過ごす。
訓練、何て口だけだ。

「やりたくないの?」
「え?あ…」

バレた。
レイは「そう、なら仕方ないわ」とだけ残して訓練していたネルフ宿舎を後にする。
仕方ない、つまりやらない、と見なされたのか。
それならそれで別にいい。
第一自分は最初からやるとは一言も言っていない。
結局やる事もなくシンジは家に戻るしかなくなった。
家に戻ったら、彼女もミサトのマンションに住むと言ったのだからやはりアスカと会わなくてはならない。
なんだか気まずいな、だけど今はもしかして訓練中だからいないだろうか?そんな淡い希望を抱きながらゆっくりとドアを開く。

だが結局希望が叶うはずもなく、テレビのあるリビングでカヲルとアスカがユニゾンの訓練をしていた。
ただいま、と呟くと訓練中の二人と目が合う。
あぁ、気まずい。
そのままアスカはシンジの存在など最初からいなかったように用にまた訓練に戻ってしまう。
カヲルは一様微笑み返してくれた。
しかしカヲルもまたアスカ同様に訓練へ戻る。
先程の微笑みなど嘘のように真剣な顔をして、二人してハードな動きをしている。
そんなにこの訓練は大変か?と疑問を持つが惣流相手だから大変なのかな、と右から左へ流しておく。
息は見事なまでにぴったり。

ふと壁にかかっているカレンダーに目が行く。
作戦決行日が大きく赤い丸で囲まれており、今まで過ぎていった日にばつ印が書き込まれている。
そうか、自分がネルフの宿舎に寝泊まりしている間にそんなに時間が立っていたのか。
ネルフの宿舎では何も面白くなく、心ここに在らずな感じだったので今更今日の日付を知る。
ん?今日がこの日なら、作戦決行日は明日じゃないか。
だから二人とも必死なのか。

ミサトさんは?
部屋を見渡しても気配はない。
いないのかと思いミサトの部屋のふすまを開けると大の字になって寝ていた。
仕事が溜まっていて疲れたのだろうか。
起こさないよう、ゆっくりふすまを閉める。

後は、何をすればいいだろう。
二人は訓練が忙しいだろうし、ペンペンは空気を呼んだのか冷蔵庫の中から出てこようとしない。
ここにいても二人の訓練をただ見てるだけ。
そんなの、いる意味がない。

やる事もなく、シンジはそそくさと自分の部屋へ逃げ込んだ。
カヲルとアスカの間の雰囲気に、耐えられなかった。

自分の部屋に逃げ込んでから改めて何だかかっこ悪い事に気付く。

(ああ……何、やってるんだろう)






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葛藤するシンジと緩やかに進行する物語(笑)


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