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愛あれば愛ゆえに
きっかけは些細な事だった。
別に嫌いになったとか、そういう事じゃない。
逆に好き過ぎて、傷付けてしまった。
大切だから誰にも渡したくなくかった。
その口から優しい言葉を聞きたかった。



あればゆえに




「君は僕よりも他の人がいいんだよね」
「シンジ君?何を言って、」
「カヲル君は本当は僕の事好きじゃないんでしょ!?」

今にも泣きそうな顔で訴える。
好きだなんて、信じられない。
実質上彼は誰にだって笑顔だし優しいし、知り合いの人皆が好きだ。
アスカにレイ、ミサトにリツコ。
皆皆、カヲルにとっては大切。
でも僕はその中でも特別、そう知ってたハズ。
知っていたはずなのに、急に怖くなって疑ってしまう。
何か自分にだけの優しい言葉を聞きたくて酷い事を言ってしまう。
天使みたいに綺麗な彼の中の特別だという、確かな証が欲しい。
ただの棒読みの言葉じゃなくて、ちゃんとした証が。

「僕は特別じゃないんでしょ!?嘘…ついてるんでしょ……」
「そんな事…」
「嘘だ…本当は僕の事嫌いなんだ」

…嘘。
全部嘘。
こう言ってしまえば優しい彼は不定するに決まっている。
カヲルに優しい言葉をかけてもらいたいから、自分が彼の中特別だと認識したいから、傷付けてしまう。
誰かと同じじゃあ嫌。
そしてその誰かを知りたくない。
知ってしまったら、狂ってしまいそうだ。

「僕はこんなに好きなのに、君は…君はっ!」
「シンジ君……落ち着いて…」

僕は今、どんな顔をしているのだろう。
泣きそうな顔?それとも人を寄せ付けないような険しい顔?
何かが、頬を伝い落ちる。
あぁ、泣いているんだ。

その顔に反応するかのように差し伸べられる、白い手。
自分に向けられている白い手。
今は自分だけに向けられている、今は。
だけど別の人にも向けられているかも知れない。
いくらこの手を握り返しても、するりとすり抜けて手を離してしまったら最後、まるで高い空へと舞い上がって行った風船のように手にする事は出来なくてなる。
そしてえんえんと子供のように自分は泣き叫ぶのだ。
だったらはじめから掴まない方がいい。
大切にしてなくしてしまうより大切にしないでなんの感情もなく手放してしまった方が。
優しくされてしまったら、優しくしてしまったら手放すのがもっと辛くなる。

差し伸べられた白い手を拒むようにぱしんと払った。
乾いた音、結構強くてやってしまった。
痛かったかな。

「シンジ、く…」

見上げると、今度はカヲルが今にも泣きそうな顔をしている。
酷く傷付いたような、何かを失ったみたいなそんな顔。

「あっ……ごめっ…」

その顔を見て、急に今までの思いが吹き飛ぶ。
また傷付けてしまった。
今回こそ本当に嫌われてしまうかも知れない。
いや、絶対に嫌われた。
だって、その証拠にカヲル君の今の顔は……

怖い、嫌われる事が怖い。
怖い、君を失う事が。
失いたくない。
まだ一緒にいたい。

「……ごめん」
「どうして、どうしてそんな事言うんだい…?」

白い頬を伝い落ちる涙。
どうしよう、泣かせてしまった。
カヲルは純粋に悲しいという顔をしている。
そう、自分の言った事で傷つけてしまった。
傷つけたくないのに、傷つける事が目的だった。
わざと傷つけて、優しさが欲しかった。
ただ優しさが欲しいだけで、こうやって人を傷つけてしまうのだ。
傲慢で我が儘な自分に自己嫌悪を覚える。
今更覚えたって、意味がないのに。

「僕は……本当にシンジ君の事が好きなのに…」
「ごめん、ごめんね…」

こんなにこんなに好きなのに。
ちゃんと伝わっていない訳じゃないのに、不安で不安で。
不安なだけだった。
ただ不安なだけでこんなに泣かせてしまって、自分は最低だ。

「カヲル君…ごめん…」

泣かないで、恥ずかしいけれど強く強く抱きしめる。

「……ごめん」

謝るしか出来ない。
謝る以外、言葉が見つからない。
いざこういう面に直面してしまうと、どうすればわからない。
なんて言葉をかければ良いかわからない。
言葉がわからないなら、態度で示せばいい。
本当に自分は悪い事をしてしまったと、申し訳ないと。

「カヲル君、」
「…シンジ……くん、僕は本当に…」
「…うん」
「君の事が……好きなんだよ?」
「……、うん」

最初から知っていたのに。
その答えも胸の中にあったハズなのに。
いつしかそういった想いは忘れていて、消えていて。
お互いに、好きだったのに不安になってたんだ。
でも、好きだから想いを伝えたいんだ。
好きだから、好きだと言って欲しい。

「ごめんね、カヲル君…僕は……我が儘だ…」
「ううん…僕も……我が儘だよ」

我が儘だから、喧嘩してしまう。
お互いに好きだという気持ちを独占したくてしょうがないんだ。
何回も何回も伝えたハズの言葉。
何回も確かめあったはずなのに不安になってしまう。
だからこうやって、強引な方法かも知れないケド確かめないと怖いんだ。
人の心は不安定だから。
常に愛されていたいと願っているから。

「カヲル君……好きだよ…」
「…僕も…好き、だよ」




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私はまとめるのがとっても下手っぴです(笑)




あきゅろす。
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