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海よりも深い眠りについて11

「あんたがサードチルドレン?冴えない顔してるわねぇ」

セカンドチルドレン、初対面の惣流アスカ・ラングレーに言われた一発目がこれだった。



────



…セカンドチルドレンが来日した。
どうやら使徒との戦いがいよいよ本格的になるようだ。
実際弐号機の輸送中も使徒に襲われたらしい。

「大変だったね…」
「でもこうして無事だったしね」

カヲルからセカンドチルドレンについての話を聞く。
なかなか可愛かったが特に興味もないので、ふぅん、だのへぇ、だの返事が曖昧だ。
しかも出会い頭に酷い事言われたし、と少々根に持っている。

そのセカンドチルドレンのお迎えとやらにカヲルとミサトは行ってきた。
どうしても行きたいと駄々をこねる同級生約二名と共に。
シンジは新しいチルドレンには興味はなかったので、ネルフにレイとお留守番。
その間なんの会話もなかったため、非常に寂しかった。
第一ヘリコプターへはそんなに多人数は乗れない。
定員オーバーというやつだ。
どういう訳だかその間にトウジやケンスケとカヲルが仲良くなっていて、やはり自分も行けばよかったと少し後悔する。

海上で襲われた使徒には弐号機で対応し、無事殲滅したとの事だ。
カヲルはアスカのプラグスーツを借りて一緒に乗ったらしい…。

「じゃあ、上がってよ」
「お邪魔します…」

学校から帰り、シンジが扉を開けてカヲルを迎え入れる…は良かった。

「あれ?僕の…荷物?」

なんだか様子がおかしい。
廊下にシンジの荷物が段ボールに突っ込まれておいてある。
というか全部部屋から出されてる。
一体何事だ、と二人が奥まで進むと、先程まで話に上がっていたセカンドチルドレンこと惣流アスカ・ラングレーがいるではないか。

「え…?な、何でいるんだよ」
「何でも何も、ここ今日から私の家だから」
「……え、えぇ!?」

暫しの沈黙の後、シンジは声を張り上げた。

「ちょ、ちょっと待っ…」
「あんたの部屋私が使う事になったから、いいわね?」
「僕は何処に住むんだよ!?」
「知らないわよ」
「知らないって…」
「あの…」

二人の喧嘩染みた会話を切ったのはカヲルだった。
物凄く申し訳なさそうだ。

「あら、バカヲルいらっしゃい」

アスカは平然と自分の家のように振る舞った。
まあ今日からアスカはここに住むらしいが。
それよりもカヲルに対しての態度、一体どういう全体どういう事なのか。

「ちょ、いきなりその態度はないんじゃ…」
「あら何で?だって私達」



「幼なじみだもの」

アスカの口から、衝撃的な言葉が出た。
幼なじみ?
幼なじみって…あの?

「………えぇ!?」

何から何まで、今日は驚かされる事ばかりだ。

「聞いてなかった訳?こいつが前にドイツに住んでた事」

シンジはうっすらと消えかけている記憶の糸を急いで辿る。
とりあえず昨日話していた事から、一週間前まで。
そしてカヲルが転校して来た日まで。
ふと、何か思い当たる節があった。

転校して来て、女子に質問攻めにされている時彼はなんと言っていたか?

『渚君ってどこに住んでたの?』
『アメリカだよ。その前はドイツに住んでいたんだ』

思い出した。
確かにドイツに住んでたと言っていた。
だが記憶に薄かったのは恐らくその頃はあまり仲が良くなかっただからだろうか。

「だから私がこいつに遠慮する必要なんてないのよ」

ね?と言ってカヲルの背中を強く叩くと、アスカはすぐに自分の部屋…元シンジの部屋へと入って行った。

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

シンジの荒げた声は虚しくリビングに響き渡り、横のカヲルが苦笑いするだけだった。

後日、空いていた部屋を片付けてどうにか住む所を確保したシンジ。
だがシンジの受難はこれで終わらない。
寧ろこれから…と言った方が適切だった。

「あたしに任せなさい!」

そう言ってアスカは先陣を切って行く。
突如現れた使徒、それに立ち向かうべく初号機と弐号機が出動した。
零号機は調整中、四号機は前の使徒の件で修理中だ。

弐号機は見事に大きく振り上げたソニックグレイブで使徒を真っ二つにし、どんなもんよとアスカが胸を張った…が真っ二つにした使徒は分裂し、インチキよ!とミサトが叫んでる間に弐号機、控えていた初号機共に撃墜されてしまったのだった。
その後使徒はN2爆雷により足止めされたが、次にまたいつ来るかわからない。

「私は悪くないわ!バカシンジさえいなければ…」

シンジに向けられる理不屈な怒り。
意味もなく怒りをぶつけられてシンジだって黙っている訳じゃない。

「そんな事言ったって一人でも負けてたよ…」
「なんですって!?」
「だまらっしゃーい!」

二人の喧嘩を止めたのはミサトのこれでもかという大声。
うだうだ喧嘩する二人に耐えきれなくなりキレたのだろう。
結局二人はその後帰され、後日攻めて来るかも知れない使徒に対しての待機となったのだった。
作戦はまだ決まってないらしい。

「何よ、私は悪くないのにそうでしょ、バカヲル!」
「カヲル君、惣流なんて相手にしない方がいいよ」
「なぁんですって!?」
「あはは…」

しかし待機はいいものの、二人の喧嘩は収まっていなかった。
ネルフ内の廊下に大声を撒き散らしながら現在進行形でカヲルまで巻き込んでいる。
一方のカヲルはどちらに対しても嫌悪な態度は取れないので、それはそれは困っていた。
果たしてどうすればいいものか。

「どうしたの?」

そこへ助け船、と言わんばかりにレイが登場した。
ある意味間が悪いというかなんというか。
とにかくカヲルは助かったのでホッとしている訳だが。

「あら…あんたがファーストね」
「……?」
「私はアスカ、惣流アスカ・ラングレー!セカンドチルドレンよ!よろしく」

「……そう」

気取って名乗るアスカにまるで興味がない、とでも言いたげにレイはアスカから視線を背けた。
そんなレイの態度が気に入らなかったのか、はたまた先程まで喧嘩していたため苛々が募っていたのか、アスカはレイに対し顔をしかめた後それだけな訳?と肩を掴んだ。

「何?」
「あんた…他に言うことはないの?」
「ないわ」

あっさりと言うレイに、苛々が爆発したのか胸ぐらを掴み怒鳴りつける。

「私は特別なの、エースなの!いい!?もっと興味を示しなさいよ!」
「……アスカ、」

カヲルが止めに入ろうとした時、なにやってんのよ、とミサトの声が響いた。




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エヴァはアスカが登場する中盤から明るくなるイメージがあります。
しかしどちらにしよ後半からはまたシリアスで暗い展開になるわけですが(笑)


あきゅろす。
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