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雪やこんこ

何となくテレビを見たい気分だなぁ、と思いカヲルは寝そべっていたベッドから飛び起きた。
見る番組は大体ニュース。
手頃な情報も手に入るし、それなりに面白い。

『日本には、実に15年ぶりの雪が…』
「雪…?」

雪、確かセカンドインパクトが起きる前の日本には冬という季節があり、その季節には雪というものが降ったらしい。

「雪…ねぇ」

この一年中暑い国に、雪が降ったらどうなるんだろう。
皆驚くんだろうか。
はしゃぎ回って、遊んだりするのだろうか。

ぼんやりとテレビを眺めていると、携帯に一通の着信が入った。

「シンジ君だ…」

とりあえず携帯を手に取り、着信に応答する。
受話器をあげると、楽しそうなシンジの声が耳に聞こえた。

『渚、外見える?』
「外…?見えないけど…」
『そう、外。いいから見てみなよ』

地下にあるジオフロントの中心に立てられているネルフ…の中にあるパイロット宿舎。
勿論ここから地上の天気がわかる訳もない。
ついでに外に出るのはいちいち面倒くさい。

「なんで?」
『いいから、早く』

いつもより楽しそうなシンジが急かすので仕方なく外に出てみる事にする。

「うわ、さっぶ!」

外に出てみたら、いつもとは違い急激な寒気を感じた。
身体のそこからぶるぶると震え上がってしまう。
カヲルはいつものようにラフな格好をしていたので、余計に寒い。
上を見てみると、白い粉のような何がはらはらと音もなく降ってきている。

「渚!」

いつの間にか携帯の着信は切れていて、目の前には先程まで話していた電話の相手がいた。
モコモコとした格好をしていて、大分暖かそうだ。
羨ましい。

「雪だよ、雪!」
「雪…?」

これが雪か、はじめて見た。
カヲルは目を丸くさせて上から降ってくる白い粒を見つめる。
ふわふわしていて、美味しそうだ。
そんな事より

「寒いよシンジ君…」
「あ、はいこれ、渚の分」

シンジがカヲルに手渡したのは、普段なら絶対に着ることはないであろう分厚いジャンパー。
まあ確かに今なら暖かそうだ。

「ありがと…」

カヲルはそれを受け取ると、急いでそれを羽織った。
先程まで鳥肌が立っていた肌は、少しだけ暖かくなった。

「暖かい…」
「渚、ちょっと出掛けようよ」
「え?何で」
「雪なんてもう見る事もないかも知れないだろ?だから雪が降る街を歩いてみようよ、恋人みたいにさ」

今、シンジの口からシレッと恥ずかしい言葉が出た気がした。
雪で舞い上がっているからだろうか。
どちらにしよ普段シンジから滅多にこういう事には誘ってくれないから、誘ってもらうのは嬉しい。

「…いいけど」
「じゃ、行こうか」

そう言うとシンジの手がカヲルの冷たい手を掴んだ。

「手、冷たいね」
「寒いもん」
「僕の手で暖めてあげる?」
「…シンジ君何か今日変」

それは雪のせいかもね、と楽しそうに笑顔を作ったシンジに違和感を覚えつつ、ちょっぴり雪に感謝した。



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そろそろこんな時期ですね(笑)


あきゅろす。
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