さようなら
使徒、戦い、爆発…あまりにも一瞬で、何があったか理解出来なかった。
自分を守って…機体が爆発して跡形もなく消えてしまう、そんな事が目の前でおこった、信じがたい。
それでも彼は生きていた、彼は。
「カヲル君…!」
「……誰?」
あの日あの時から、少年は笑う事を忘れた。
今までの微笑みが嘘だったように笑みが消えて、まるでそれは人形。
「覚えて、ないの…?」
「何をだい?」
血塗られた瞳が映し出したのは酷い顔をした自分。
見ていたくない、こんな瞳。
「僕の事…」
「覚えていないね」
「何で…?」
つい先日まで体を重ねて、愛しあっていたハズなのに。
まるで何もかも忘れてたしまった記憶喪失の少年のように、全てを失った。
「何故って…僕は前の僕とは違う」
「違うって何がだよ…意味が分からないよ…」
「僕は、二人目だから」
いつしか少女から聞いたような言葉。
また、この言葉か。
「何、それ…」
少女も同じような事を言って、シンジを見ようともしなかった。
それどころか彼は性格すら変わってしまったようで。
「僕の事…使徒からかばって…」
「…知らない」
使徒からシンジをかばって自爆した、本当にその事すら覚えていないなんて。
知らない、覚えてない。
その言葉は刃物となって心に傷をつけた。
──これは僕の大好きだったカヲル君じゃない……!
「……う、」
「違う違う違う…」
「こんなのカヲル君じゃない!」
目の前にいるのはカヲルの姿をした紛い物だ、自分にそう言い聞かせて真実から逃げた。
本当は分かってるハズなのに。
「僕は正真正銘、渚カヲルだよ」
「違う…!!違う違う違う違う違う!」
認めるのが怖かった。
本当の渚カヲルはいないという事を。
一人になるのが、嫌だった。
「違う…」
「違くないさ、君は逃げているだけ」
僕が大好きだったカヲル君は、こんな事言わない。
…逃げているだけ。
「分かってる…よ…」
分かってる、だけど目からは無意識に涙が溢れ出た。
「じゃあ君は…誰なんだよ…」
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3万HIT記念に書いた作品
よくありがちなネタですね(笑)
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