シンカヲバレンタイン(貞)
「シンジ君シンジ君!」
「何だよ…?」
放課後、遠くの方から渚が僕の名前を呼びながら走ってくる。
はっきり言って内心嬉しかったりするケドあえて表情に出さないでおく。
「一緒に帰ろう!」
「嫌だ」
「えぇ…酷いなあ」
眉を潜めてぼやいている顔だって可愛い。
嫌だと言ってもついてくる渚、それはそれでまた嬉しいんだけど。
あ、そういえば今日は…
「ねえ渚?」
「何?」
「今日何の日か知ってるよね?」
「今日…?」
もんもんと考え始める渚も可愛い…じゃなくて。
「知らないの?」
「……わかんない」
しばらく考えた後、あっけらかんとした顔で答えた。
知るわけないか。
こいつは綾波以上に無知なんだから。
なんてったって痴漢すら知らないんだ、バレンタインデーを知るはずがない。
「…あ」
「……?」
渚が何かを思い出したように声を上げたかと思うと、鞄の中からごそごそと何かを取り出す。
「はい、シンジ君これ!」
満面の笑みで差し出してきたそれは…
「もしかして…チョコだったりする?」
「うん!」
渚からのチョコ。
まさか貰えると思ってなかったから凄く嬉しい。
ああ幸せ、生きてて良かった!
…ちょっとまて、じゃあ何故さっきわからないと?
「渚…わかんないって言ってなかった?」
「へ?何が?」
そう言ってにこにこ笑ってる渚。
何がって…
「じゃあこれは…?」
「セカンドに今日チョコを渡すといいって言われたから」
……何だ、やっぱり知らなかったのか。
でもとにかくアスカに感謝しないと。
今日、バレンタインデーに渚からチョコを貰う事が出来たのは事実だ。
僕は渚にありがとう、と伝えると溢れそうになる笑みを押さえながらチョコの入った箱を鞄に乱暴に詰め込んだ。
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