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消える飛行機雲



消える飛行機雲



「あっつい……」

誰もいないのを確認すると何をするでもなくただ上を見上げてみる。

何もない青い空に、小さな鳥が一羽飛んでいるのを見つけた。
周りには他の鳥もいなく、まるで今の自分のように見えてしまい虚しくなる。
自然と手に持っている携帯に目を落とすと、待っている人からの着信はなくてさらに虚しくなる。
無駄に暑くて寂しくて、ちょっと夏が嫌いになった。


…僕は何をやっているんだろう。


「あーあ」

特に意味もなく声を上げて、草むらに体を投げなす。
草がちくちくして痛い。

空が嫌になって目を閉じると今度はセミが鳴く声が無駄に煩くて、余計に暑く感じる。
気をまぎらわす為に携帯を開くと、タイミングよく着信音が鳴り響く。

「もしもし…?」
「あ、フィフス?あたしよあたし」
「誰?詐欺?」
「はぁ?このあたしに向かって本気で言ってんの?」

冗談だよ、といってなだめれば急に激怒の声が聞こえた。

「あのさ、あんた午後暇?」
「へ?」
「予定変更、プール一緒行かない?」

プールか、まあいっか。
暑い日には最適だしね、プール。

「良かった!じゃ2時に水着持ってプールね!」
「あ、うん…」

生返事を返すと電話がいきなり切れた。
何か嵐みたいだったなぁ…
なんとなく携帯を草むらに投げてまた空を見上げた。
ああ、何もないや。

「しょうがないなぁ…」

よいしょと立ち上がり歩き出した途端、ふと思った。


僕がずっと待っていた意味っていったい…






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2009年に暑中見舞としてフリー配布した作品
配布は終了しました


あきゅろす。
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