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人になりたい


僕は使徒だから、君と心を通わせる事も出来なければ一緒に生きる事だって出来ない。

「渚」
「……何」

弱々しいけど、しっかりと意思を持った声が僕の名前を呼んだ。

「一緒に、生きよう」

例え僕が使徒だと知ってもシンジ君はそう言ってくれる。

──だけど

「無理、だよ」

君と僕は違うんだ。
もちろん、心も体も考え方も。
僕は…使徒は全ての人から拒絶される。
例え君が好きになってくれたって周りはそれを許さない。

「無理じゃない」
「…無理だよ」
「無理じゃない!」

先に大声を上げたのはシンジ君。
僕が不定的な反応ばかりなのが気にくわなかったようだ。

「今までだってちゃんと生きてこれたじゃないか…」

今までと、今とじゃ違うんだ。
知らなかったんならまだ良い。
一生知らずに幸せに生きていけるのだから。
知らぬが仏ってやつだ。
でも知ってしまったら後戻りは出来ない。

そう、

「あの時と違うんだ」
「でも…!」
「シンジ君には…わかりっこない」

僕の気持ちなんて使徒じゃない君に分かるハズがない。
どんなに泣いたって苦しんだって誰も救ってくれやしないんだから。
君みたいなリリンには絶対に分かんないよ。

「…さよなら」

だから、これ以上君と一緒にいれないんだ。
お互いを傷つけない為にも、君の為にも。

「渚!」

慌てたような声が後ろから聞こえた気がした。
それにワザと気付かないフリをして、一歩、また一歩と何もない先へと歩き始める。

この先にあるのは何でもない、ただ無に帰るだけ。
だから何も怖くない。
僕はただ歩きながら、夢みていた幻を思い出す。



──人になりたかった







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好きなんだけど叶わない恋を目指したらこんな事に


あきゅろす。
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