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地獄の季節
地獄の季節




地獄のにいても雨は降る。
二人きりの世界にざあざあと不愉快な音を立て、雨は去って行く。
そう、まるで嵐。

「何もないわね」
「そうだね」

世界が再生されても、使徒が消えても、私達は消えないんだ。

「私達は何故ここにいるのかしら」
「さぁ…」

目の前に広がる海。
そして横にいるのは赤い瞳のよく知った少年。

「本当何もないわね」
「そうだね」

そう、何もない。
生物も何もいない。
いるのは私達二人だけ。
でも食べる物も何もないからいずれ死んでゆくのかしら。

「やっぱり私死ぬのかしら」
「さぁ」
「さっきからそればかりね、話聞いてる?」
「聞いてるよ」

でも僕は死なないよ、と言われたような気がした。
こいつ、そういえば使徒なのよね。
羨ましい。

「私が死んでもあんたは生きてるのよね」
「そうだね」

つまりずっとこの誰もいない地獄にずっと独りぼっちで生きていく訳よね、可哀想に。
私だったら、寂しくて死んじゃうかも。

「ねぇ、どうせ死ぬんだから良いことしてみない?」
「良いこと?」
「そ、良いこと」

何も知らずに死んでいくなんて勿体無い。
せっかくなんだからやる事やらないと。
……なんだか人生を再生するアダムとイヴみたいだ。

「いい、ゆっくり目を瞑って」

薄い唇に、ゆっくりキスを落とした。





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