翼をもいで
翼をもいで
カヲル君は自由だと思う。
僕とは違って自由。
ずるい、僕は君みたいに自由じゃないのに、君はいつも僕の前から勝手にいなくなる。
そう、いつもいなくなるのは君の方から。
「カヲル君は僕のものにはなってくれないの?」
「…僕は自由だ」
だから君に殺されるのも僕の自由、と言って微笑んだ。
カヲル君の行動の全ては、カヲル君の意思が決めている。
だから、自由。
彼は自由になる事が出来る、翼を持っているんだ。
僕みたいな人間にそんな翼はついてない。
「カヲル君はいつかまた僕をおいていくんだね」
その翼で、僕の知らないどこか遠くへ行ってしまうんだ。
──そんな翼、なくなればいいのに。
「僕、カヲル君の事が嫌い」
「……そう」
嫌い。
僕のものにならないから。
いつも君は僕をおいていくんだ。
僕は君をおいていった事なんてないのに。
「でも好き」
だからどこにも行けないようにその翼を折ってしまえばいいんだ。
「こうすればどこにも行けないよね?」
初号機の右手で強く強く握り締めると、苦しそうな顔をした。
そうだ、もっと深くえぐってあげよう。
もっと深い苦しみに落としいれてあげよう。
右の手により強い力を入れるとグチャ、と嫌な音がした。
……あ、殺しちゃった。
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