君と泣く
君と泣く
(泣いていたのは僕の方)
「カ、ヲルく、」
「…ごめん」
その一言を残して僕の視界からカヲル君は消えていく。
待って、カヲル君…!
「追いかけたら?」
綾波の声が上から降って来る。
そっか、僕はまだカッコ悪い姿で廊下に伏せたままだ。
「貴方が謝らないと駄目よ」
僕の身勝手な告白、僕の身勝手な行動、僕の身勝手な嫉妬、僕の身勝手な発言…
考えて見るとカヲル君を傷つけてばっかりだ、駄目だな…僕。
好きって言ったり嫌いって言ったり、きっとカヲル君の頭の中はぐちゃぐちゃだ。
「うん…ありがとう綾波」
「…いいのよ」
綾波に別れを告げると僕はカヲル君の後を追った。
今度はちゃんと言わなきゃ、嫌いじゃないって、大好きだって。
「カヲル君!」
「…シンジ君」
自販機コーナーのベンチに座っている浮かない顔のカヲル君を見つけた。
僕はカヲル君に一歩一歩、歩み寄る。
「…また僕の事嫌いになっただろう?」
あんな顔でシンジ君を見てしまって、シンジ君の手を拒絶してしまって…申し訳なさそうにカヲル君は言葉を発する。
「そんな事、ないよ」
「…でも」
「僕こそ…嫌いになったよね、嫌いだなんて酷い事言って」
カヲル君は顔を動かさずに紅い瞳をつい、とこちらに向ける。
疑り深く、僕の行動を探る用に。
「本当は嫌いじゃないよ」
「…嘘だよ」
「本当だよ」
「…嘘、だよ」
「本当だってば」
「…、」
何も言わないカヲル君をキュッと抱きしめると、カヲル君の身体が少し震えたのが分かった。
「好き、なんだよ…カヲル君の事」
「…前にも聞いたよ」
「うん、でももう一回」
「シンジ君、」
ごめんね、と僕はカヲル君に呟いた。
カヲル君は僕の腕の中から顔を上げて驚いた用な顔をした。
「シンジ君」
「ごめんね、カヲル君…」
ごめんね、本当にごめんね、僕はぐずぐずと泣きながらひたすらにそう繰り返していた。
もう良いよシンジ君、と背中を優しく叩いてくれるカヲル君の手はまるでお母さんの手の用だった。
こんなに傷付けてられて、それでもまだ君は僕に優しくしてくれるんだね…
余計に涙が止まらなかった。
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