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君と喧嘩


君と喧嘩

(我が儘な僕は自分の気持ちをぶつける事しか知らなくて)





カヲル君は一ヶ月後に退院した。
怪我は完全に治ったみたいで、いつもどうり元気に学校に来ていた。
元気になったカヲル君は僕がどれだけ心配したかも知らないで回りの生徒達とペチャクチャペチャクチャ。
僕には一切話しかけてくれない。
そのせいで僕は一人で席に座ってカヲル君を眺める形になった。
ずっとカヲル君を見ていると、こっちに振り向いたカヲル君と目があった。
カヲル君は僕に優しく微笑んで、そのまま回りの生徒達との話しに戻ってしまった。
…その後はカヲル君はこっちを向く事はなかった。


放課後、僕は帰ろうとするカヲル君を呼び止めた。

「あのさ、カヲル君…」
「なんだい?」

話題が思い付かなくて気まずい雰囲気になる。
それでもカヲル君はずっと僕を見てにこにこしている。
僕は、君の事ばかり考えているのに。
いつもその笑顔を他の人達に見せてるの?

「あの、退院、おめでとう…」
「ありがとう」

また話しがなくなり、気まずい雰囲気に。
何か話題、話題…
そういえば聞きたい事があったんだった。

「カヲル君、今日」
「今日がどうしたんだい?」
「なんで話しかけて来てくれなかったの?」
「…シンジ君が体調悪そうだったから」
「嘘だよ」
「え…?」

体調が悪そうだった?
僕は体調なんて悪くなかった
俯いて窓の外を見ているのだって、この喋り方だって、全部全部普通通りだった。

「嘘だよ…そんなのただの口実だろ!?」

ただ回りの生徒と話してればカヲル君はそれで良かったんだ
この前、気持ち悪い事言ったから…僕に近寄りたくなかったんだ

「本当は僕の事なんてどうでも良かったくせに…!父さんと同じで僕の気持ちを裏切ったんだ!」
「シンジ君っ…」
「カヲル君なんかっ…大嫌いだっ…!」
「っ…!」

カヲル君の方を見ると、悲しそうな顔をしていた。

「……」
「ぁ…」

…僕は今、カヲル君に何て言った?

カヲル君は下をうつ向いて廊下を走って行った。
僕から逃げるように。
そう、逃げるように。
去り際に見えたのは目尻にうっすら浮かんだ涙。

「待ってよカヲル君…!カヲル君っ!」

何回大声呼んでも彼が立ち止まって振り向いてくれる事はなかった。
僕はカヲル君に…絶対に言ってはいけない言葉を言った。
ああ、リセットボタンが、あればいいのにね。


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