カヲアスバレンタイン
明日はバレンタイン、アスカはキッチンでシンジに教えてもらいながらチョコを作っていた。
「で、次はどうすんのよ」
「次はチョコを型に流し込むんだよ」
「ふーん」
適当な相づちをうち、アスカは冷蔵庫からおもむろにカットされたスイカを持って来た。
スイカチョコでも作る気か。
「何でスイカ…!?…まさか加寺さんに!?」
「何よ、悪い!?」
スイカチョコ…加寺さんも気の毒に。
自分だったら絶対に食べたくない、と横目で見つつシンジは自分の作業を開始した。
「何であんたがチョコ作ってんのよ?」
「ぼ、別にいいじゃないか」
「ははーん、フィフスにやるのね?ホモシンジ!」
図星。
図星なのだが、ホモと言われるとカチンとくる。
「あ、アスカには関係ないって言ってるだろ!?そうゆうアスカは何だよ、スイカチョコ横にある小さいのは!?」
思わずアスカに反論をするシンジ。
アスカは横にある小さなチョコを指摘されて一瞬動揺した。
その一瞬の動揺を隠しアスカもすかさず反論。
「べ、別にいいでしょ!?自分用よ!」
「ふーん…」
「何よ…」
アスカの瞳がつい、と右へ流れる。
アスカは嘘をつくのが下手だ、シンジはアスカが嘘をついている事がすぐにわかった。
そこでいつも嫌な事を言われてる分仕返ししようと考えた。
せっかくだ、思う存分問い詰めてやろう、アスカの好きな人とやらを。
「もしかして好きな人が出来たとか?」
「ち、違うわよ!」
その問いに、アスカは顔を真っ赤にして反論した。
怪しい、絶対に好きな人が出来たんだ。
「へえ、先輩?後輩?」
「いないって言ってんでしょ!?」
「じゃあ同学年?同じクラス?」
「だ、だからっ…!」
アスカは内心焦った。
同じクラスだったのだ。
しかもそれはシンジの意中の人。
だがその慌てぶりは余計にシンジを感づかせてしまった。
「じゃあもしかして」
「っ…!」
「カヲル君?」
「な…!!!」
多分当たりだ、シンジは確信した。
それを解っていて、否、腹いせにもっといじめてやろうと思った。
カヲル君は僕のだと意味も込めて。
いろんな意味で最低だ。
「違うよね?」
「……」
「だってカヲル君は僕の物だし」
「フィフスを物扱いすんじゃないわよ!」
「えっ…?」
一瞬の間。
アスカがシンジを怒鳴りつけた。
シンジは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、チョコを作っている手を止めた。
アスカは普段よく怒鳴るが、それよりも大声で、怒りを込めて怒鳴ったのだ。
怒ると怖いとかいうやつだ。
「そ…そこまで怒らなくても…」
「…あんたが悪いのよ」
自分が悪いとは思っていないらしい。
いや、この場合シンジが悪いのだが。
唖然とするシンジに睨みを聞かせ、再び大声で言いはなった。
アスカの大声がキッチンからリビングまで響き渡る。
「あんたなんかには負けないんだからっ!」
あんたバカぁ?と言う時のおなじみのポーズでシンジを指差す。
宣戦布告というやつだ。
それだけ言うと、アスカは顔を背けて溶かしたチョコを一気にスイカにぶっかけた。
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