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海よりも深い眠りについて2
シンジは退院した直後ミサトに呼ばれ、ミサトのマンションで一緒に暮らす事が決まった。
何しろ急だったので、シンジの荷物は後日ミサトのマンションに届く、という事になったらしい。

「シンジ君、食べないの?」
「え?た、食べますよ」

食事は全てインスタント。
食欲は起きない。
インスタントじゃなくても今は食べる気がしない。
食事がインスタントなのからわかるように、家の様子を見渡すとミサトは家事全般は苦手らしい。
あちこちに酒瓶が散乱している。

「そうそう、今日フィフスチルドレンが来日したのよ」
「そうなんですか…」
「同じパイロット同士だし会っとかないとね」
「…はい」
「明日ちゃんと召集来なさいよ?」
「…はい」

緊張してるのか警戒してるのか。
シンジはミサトにそっけない返事しかしようとしない。

食事が終わり入浴も済ますとシンジはそそくさと自分の部屋に入って行ってしまった。

(警戒してるのね…無理ないか…)
ミサトはシンジと今後どう接するか、悩まざるを得なかった。



(あの人…)

部屋に込もるなりシンジはベッドに横なり、考え事をしていた。

(似てる…)

思い出していたのは今日廊下で衝突した少年の事。
少年は誰かに似てる、言うまでもないその人物は

(綾波…レイ)

赤い瞳も白い肌も人間味の無さも、似ている。
唯一違うのは性別。
もしかして兄妹か何か…?

(なんだろう…)

懐かしい、感じがした。
きっと会ったのは今日が初めてではないはず。
対した根拠もないのに、シンジはそれを不思議と確信する事が出来た。

「おはよう」
「あ…うん」

シンジが新しい学校に通い始めてから一週間がたった。
はじめのうちは転校生だという事でチヤホヤされたが、時間がたてば周囲のシンジへの態度は冷めていった。
まあ、当たり前か。
シンジは人付き合いが得意でもなければ特にかっこいいという事もない。
何か特別でなければチヤホヤされる事などないのだから。

「聞いた?今日また転校生が来るんだって」
「そうなんだ、どんな子かな」

周りの会話が聞こえる。
シンジは薄々誰かわかっていた。
きっと、あの少年なのだろう。

──数日前

シンジはミサトに至急ネルフ本部へ来るよう呼び出された。
紹介したい人物がいるらしい。

(紹介って…誰だろう…)

シンジが半信半疑の状態で待っているとミサトはある人物を連れて来た。

「シンジ君、紹介するわね。フィフスチルドレンの渚カヲル君よ」
「っ…!き、君はあの時の…!」

病院の廊下でぶつかった少年だった。
銀色で赤い瞳の、あの少年だ。
見間違えるハズがない。

「あれ…君がサードチルドレン…?」
「あ…うん」
「彼はエヴァンゲリオン四号機の専属パイロットよ。勿論今後の作戦にも参加してもらうわ。二人共パイロット同士仲良くする用に」
──

「渚カヲルです」
「渚は外国から転校してきた。日本の事はよくわからないと思うから教えてあげるように」

やっぱりシンジが思った通りだった。
周りの女子は黄色い声を上げ、男子は面白くなさそうな顔をしている。
美少年にはよくある事、じゃないだろうか。

「渚君ってどこに住んでたの?」
「アメリカだよ。その前はドイツに住んでいたんだ」
「ねぇ、学校案内しようか?」
「あっ、ズルい!」

かっこいい男子の転校生にはよくありがちな会話。
女子もカヲルに少しでも近づきたいのだろう
相変わらず周りの男子はつまらなそうな顔をしてその様子を見ている。

「おい、お前ら授業を始めるぞ」

見かねた教師が手を叩いて女子生徒達をなだめる。
その教師に文句を言いつつ女子生徒は席につき、授業が始まる。
その授業は面白いものではなく、ありきたりなものだ。

「──でセカンドインパクトは」

セカンドインパクト──

15年前に南極大陸に落ちた隕石が原因で沢山の人が死んだ

…と一般の人達は思いこんでいる。

(セカンドインパクト…ね今さらリリン達はこんな事を…)

真剣に話を聞く生徒達とは裏腹にカヲルは話の内容を下らないと思い窓の外を眺め始める。
そんなカヲルの様子に気付いたのか、シンジはこっそりとカヲルの方へ目を向けてみる。
やっぱり綺麗だと思う。
そして、とても神秘的。
綾波レイと並べるとさぞお似合いだろう。

──何考えてるんだよ…

シンジはふと我に帰りパソコンに目線を戻す。
よく見るとメールが来ているようだ。
一体誰から、そしてどんな内容かと思い開くとこんな内容だった。

─ この間のロボットのパイロットって碇くん?

どこでそんな事を知ったのだろうか…しかしシンジは事実なのでYESと打ち込むと「ええぇぇ!?」 と周りの生徒から声が上がる。
その後は恒例の質問攻め。

「中はどうなってるの!?」
「必殺技とかある?」

さっきのカヲルの用な状態。
そのカヲルは先ほどからずっと窓の外を眺めていた。
カヲルだけじゃない、レイもだ。
二人共同じパイロットだから興味がないのだろうか。

「へぇ、あいつがパイロットだったんだ!」
「…なんやおもろないわ」




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