トウカヲバレンタイン
「鈴原…これ…」
「お…おう」
今日はバレンタインデー、教室でトウジは委員長からチョコを貰っていた。
だがしかし
「はあ…」
一番欲しい奴からのチョコが貰えない、と肩を落とした。
そしてその相手を思い出して、貰える訳がない…と再び肩を落とした。
その一番欲しい相手とは
「渚君、これ…」
「渚君、貰って下さい！」
渚カヲル…
男であった。
確かに、世間で男からチョコを貰うなど聞いた事なかった。
それでももしかしたら…とゆう希望を持ち、トウジはカヲルに話しかけた。
「よう、渚」
「やあ鈴原君」
「随分とチョコ貰っとるやないか」
カヲルは、両手いっぱいにチョコを持っていた。
一人で食べきれるのか？というぐらいの量だ。
ちょっと羨ましい。
「ああ…せっかくの好意を無駄にするわけにもいかなくて…」
いらないならいらないと言えばいいのにお人好しな奴だ…とぼんやり思う。
周りから見たらいたって普通の会話である。
だが、トウジからしたら、カヲルと話すだけで内心ドキドキである。
「そういえば鈴原君は洞木さんからチョコは貰ったのかい？」
「へ？ああ…」
欲しいのは委員長のチョコではなく、カヲルのチョコが欲しい、なんて言えるハズも無かった。
恥ずかしくて言える訳がない。
トウジはとりあえず委員長から貰ったチョコを鞄にしまい始めた。
カヲルも大量のチョコをせっせと鞄にしまい始めた。
そんなに沢山どこにしまうのか。
「…ん？」
ふと机の中を見ると、小さな箱がある事に気付く。
その箱を取り出して理解する。
これはきっとあいつからのチョコだと。
本人に聞かなくても解る。
絶対にそうだとトウジは理解した。
思わず嬉しくなり、箱を手に笑みが溢れる。
ああ、幸せだ。
「あれ、トウジどうしたの？」
「な、なんでもあらへん！」
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