親愛なる貴方へ
世界で一番愛した貴方へ
必要であれば世界の果てから空の彼方まで、この想いを永久に唄おう。
世界で一番大切だった貴方へ
もしも泣いていたのなら、春に吹く風のように優しく頭を撫でてやろう。
世界で一番愛しい貴方へ
この世の終わりが来たのであれば、苦しみでいっぱいにならないように優しく眠りに着かせてあげよう。
親愛なる貴方へ
どことなく声が聞こえた気がした。
悲しげで、労るような、それでいて安心する声だ。
「──カヲル君?」
「ん?なんだい?」
「え、いや…」
「……?」
「カヲル君が…今頭を撫でてくれたような気がして」
「今のは風だよ?」
「うん…そうなんだけど……声が聞こえたんだ」
「声?」
「そう、いつも見る夢と同じ声……」
「どんな夢なの?」
「えっ、最近は見ないけどその……」
「その…?」
「君に似た声がして…君に似た人が出てくる夢…」
「………、」
「あっ、ごめん!気持ち悪かったよね…」
「いや、違うよ。話してくれてありがとう」
初めてシンジ君から夢の話を聞いた、いつも僕の夢を見ていたんだって。
なんだか恥ずかしいな。
夢、といえば僕は夢を見たことが一度もない。
いままでの15年で一度も、だ。
おかしな話だと自分でも思う。
夢以前に昔の記憶というのが僕はどうも曖昧だ。
アスカのことも思い出すまで正直時間がかかったし、もしかして僕は人間じゃないのかも知れない、とまで最近思えてきた。
(どうしてだろう)
僕もシンジ君もきっと大切な何かを忘れているような気がする。
そしてそれを思い出すまでまだ時間がかかりそうだ。
「ねぇ、カヲル君…僕達ってずっと前から知り合いだったのかも知れないよ」
「ずっと前…?」
「そう…何年も何百年も前…その頃からお互いに惹かれ会ってたのかも知れない」
「……随分ロマンチストだね、シンジ君は」
「そうかな?でもそう思っただけ…」
本当はシンジ君も、結構お喋りなのかも知れない。
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