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遠い日の記憶


街を見た。
戦いの後で、焼け落ちてなにもなくなってしまった街を見た。
廃墟となったビル、焼けた野原、鳥さえ囀ずらない、なにもない場所。
戦いは虚しいと思った。
僕とカヲルくんは瓦礫の上に腰を置いてみてから、辺りをぼんやりと見回してみた。
やっぱり座り心地がよくない。
二人で話をして、前方に見える寂れた車のボンネットに腰を掛けなおした。
なんだかつるつるする。

「ねぇ、どうして戦いは起きるのかな」
「キミはどうしてだと思う?」
「使徒が、くるから?」
「どうだろうね…」

使徒がくるから戦いが起こる?
使徒がくるから、人が死ぬ?
でもきっと使徒にだって事情があるのに、なんだかそれも理不尽だ。
勿論人間にだって事情はあるけれども。
考えてみたら、僕達は敵のことを考えてみたことがあっただろうか。
アスカに言ったらきっと「そんなこと考える必要なんてないじゃない!」って返ってくるんだろう。
前に彼女に僕がカヲルくんと付き合ってる、って言ったら顎が外れそうなくらい驚いてた。
何がおかしいのか、よく理解できない。

「ねえカヲルくん、、僕はね…使徒ともわかり会えると思う」
「何故だい?」
「僕と君は、わかり会うことができたから」
「…うん、そうだね」

見上げた空、夕日が綺麗だ。
夕日の光に当てられて輝くカヲルくんの髪はもっと綺麗だった。
銀色が赤い輝きを帯びて、それはとても幻想的な姿で。
真っ赤な瞳が僕を見つめてふわりと微笑んだ。
君はこんなにも綺麗で儚くて、素晴らしいのに。
僕達は座りながら手を繋いだ。
さりげなく僕が重ねた手を、君が握り返してくれて嬉しかった。
それから、嬉しくて涙が出た。







そうして君の名前を呼んだ。
思い返すと、やっぱり涙が出た。


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