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海よりも深い眠りについて19


もぐもぐとお弁当を頬張るアスカ。
シンジお手製の弁当だ。
自分で作ってもいいのだが、どうにもいただけない物ばかり出来上がってしまう。
その頬張る向かいで、お弁当を食べるカヲル。
…肉がない。

「そりゃ、私だって悪いと思ってるわよ」
「なら少し、打ち解けてみたらどうだい?」

食べてる間にいつのまにか話がシンジの話になってきた。
一緒に住んでる癖に、毎回八つ当たりしてしまう。
七光りだと思ってどうしても苛々してしまう。
ただ、向こうだって人間なのだから一方的にやられたらさすがに滅入るものだ。少なからずカヲルにはそれがどうにも気まずそうというか、シンジが辛そうに見えて。

「…そんなに仲悪そうに見える?」
「そうだね」
「………別に、嫌いって訳じゃないのよ」

アスカはふと考え込んだ。
恐らく本人にも悪気はないのだろうが性格が性格だ、表に出てしまうものもある。
弁当の唐揚げをひとつ頬張る。
あいつ、料理を作るのは得意なのに。

「そうだ、一緒に出掛けようよ」
「はっ?」
「だから、一緒にどこかへ出掛けよう」
「えっ、ちょ、それって…」

一緒に、どこかへ。
それってもしかしてもしかしなくても…
デ、デ、デート!?
まだ付き合ってもいないし手だって握ってないし第一幼なじみな付き合いなだけであって私には加持さんが…でもこいつ顔は悪くない、むしろいい方よね…
優しいとこもあるしちょとナルシストだけど頭もいいし運動神経も悪くないし…
なんてあらぬ方へ思考がそれていく。

「あ、あんたね…ほら、誘うんならもうちょっとこう…場所を考えてから…!」
「場所か…別にその日に決めてもいいんじゃないかな?」
「はぁ!?あんたバカぁ?それって典型的な駄目な男のパターンよ!」
「えっ?そうなのかい?じゃあシンジ君に決めてもらおうよ」
「…なんでそこであいつが出てくるのよ」
「だって三人で出掛けるんだから」
「……えっ?」

一緒に、どこかへ、三人で。
……なにかに気づいたアスカ。
どうやら自分は勘違いをしていたようで…最初からそのつもりだったらしいカヲルはにこにこと笑みを浮かべながら真っ赤になったアスカの顔を見て首を傾げた。

…デートじゃないじゃない!

「バカっ、バカバカバカ!期待させんじゃないわよっ!」
「期待?どうしたんだい急に…」
「うるさいうるさいっ」

急にヒステリックになりだし手がつけられない状況のアスカ。
普通の人ならこの状況でアスカとまた話の折りを戻そうとはせず出直すのだが残念ながらカヲルの思考はちょっと普通ではない。
何もなかったかのようにまた話を戻す。
彼らしいというかなんというか。
ある意味でアスカを扱い馴れてるとも言える。

「それでなんだけど、アスカから彼を誘ってほしいんだ」
「なんでよ!」
「一緒に住んでるんだろう?」
「別に学校でもネルフでも会えるでしょ!」
「まぁまぁ…僕達は仲間以前に友達だろう?いつまでもつまらない意地を張っていたって仕方がないよ」
「っ…!」
「一度深く関わってあげてほしいんだ、うわべだけの判断はよくないよ…」
「……」
「君だって、自分をよく知りもしない相手にとやかく言われたくないだろう?」
「…わかったわよ、もう」

なんだかんだで流されてしまうアスカ。
いつもこうだ、カヲルに上手く丸め込まれてしまうのだ。
了承してしまった以上は誘うしかない、約束を破るなんてことはさすがに格好がつかないというものだ。


こうして、話をしたのが何日か前。
それからシンジを誘ったのがつい先日。

「…負けらんないのよ、約束してるんだから」

もうすぐ使徒との戦いが始まる。
息を入れ直して、エヴァのレバーを引いた。






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あきゅろす。
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