海よりも深い眠りについて18
「あんなやつ私一人でいけるわよ!」
「…確実性に欠けるわ。時間は無限ではないのよ」
停電中、そんな大変な時に限って使徒がきた。
運が悪いというかなんというか、もちろんエヴァも電気がないと動けない訳で、予備電源である5分以内に使徒を殲滅しなければならないのだった。
そんな状況だからこそ協力が必要であるハズなのに。
「…なんであいつあんなにピリピリしてるんだ」
「エヴァに乗ることが彼女の唯一の絶対だからだよ」
「…絶対?」
「シンジ君にもあるだろう?エヴァに乗る理由」
理由、散々考えた。
考えて考えて考え抜いた結果が、まだここにいたいから、カヲルの隣にいたいから。
酷い理由だと思う。
彼がここにいなかったら乗らないのか、と聞かれたら、きっと乗らないのかも知れない。
自分を認めてくれる人がいないのならば、乗れないかも知れない。
「アスカ、時間が限られてる以上、協力は必要不可欠よ」
「…わかったわよ」
ミサトの真剣な眼差しに折れたのか、アスカは渋々了承した。
パイロットの使命は手柄を立てることではない、使徒を殲滅することなのだ。
「にしても、あの目から流れる液体が問題ね…」
「どうやらあの液体を使ってジオフロントへ攻略してくる気らしいですね」
現れた使徒の特徴としては、大きな蜘蛛のような体に無数の目がついており、その目から溶解液のような液体を垂れ流している。
コンクリートすら溶かす液体だ、もちろんエヴァだって食らったらダメージになるはずだ。
「私が食い止めるわ」
「…アスカ?」
「今回は特別に手柄を譲ってあげる、だからしくじるんじゃないわよ」
これまで前戦に出ることを強く望んでいたアスカがいったいどうしたのだろうか?
勿論彼女の気持ちはわからない、けど今の彼女の申し出は有り難い、ミサトは使徒に対する策を練りはじめる。
アスカが溶解液を食い止めているうちにライフルで撃ち抜く、それが一番安全、尚且つ安定の策だ。
「じゃあ三人共、頼んだわよ」
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