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海よりも深い眠りについて16

また使徒が一体、殲滅された。
なんでも火口にいる使徒で、特別な装備が必要だったらしく元々テストタイプである初号機は勿論待機。
弐号機と四号機によって作戦は実行、結果見事に使徒殲滅だ。

(またアスカ、か……)

どうして彼女ばかり、彼女がいなければカヲルの隣は自分のものだったかも知れないのに、ひっそりアスカを毒づいた。
溜め息をつくと幸せが逃げるなんて言われるけど心が苦しいものは苦しいのだ、深く息を吸い込んで溜め息ひとつ。

「僕は…いる意味があるのかな」

天井に向かって放った言葉は意味もなく、また静かな空間に自分の静かな呼吸の音だけが聞こえた。
眉を潜めて枕に顔を埋めると急にカヲルの声が恋しくなった。
彼ならこんなとき、どんな言葉をかけてくれるだろうか。
優しくしてほしい、拒まれたくない、でも迷惑かも知れない、無意識に携帯に手が伸びる。

「……あ、」

携帯を手に取ってからいけない、と改まる。
今はもう夜遅いしこんなこと話しても嫌がられるかも知れない。
諦めたように携帯をベッドの端に投げてから寝返りを打ってまた溜め息をついた。
そういえばしばらくカヲルと会っていない。

(……会いたい)





「…ねぇ、シンジ…どこか行かない?」
「どこか…?」

ストン、小さく開いた襖からアスカの声が聞こえた。
どこかと言われてもどこへ行くのだろうか?
いつ?どこへ?誰と?どうして自分を?

「その…最近あんた落ち込んでるみたいだったからさ、」
「……」
「バカヲルも連れてどっか行ったら元気になるかなぁって」
「…カヲル君と?」
「とあたし、何?あたしは眼中にないわけぇ?」
「……いや、そんな訳じゃないよ…」

ぼそりぼそりと呟き返しながら出かける予定を決めていく。
どうして自分が彼女なんかと、とか思いながらもカヲルと過ごす時間はどこでもいつでも安心してしまって、少しでも長く一緒にいたいと思ってしまう。

結局出かける日時も場所も決定していつの間にか行くことになっている。

「んじゃ、そういうことで忘れないでよね!」

楽しそうに襖を閉めると向こうの部屋から鼻歌が聞こえてきた。

「……わけわからないよ、もう」

自分の心がかアスカがか、ぐちゃぐちゃになった考えも何もかもがか、頭が痛いことだらけで段々悩むのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
シンジは勢いよくシーツを被りさっさと寝ようとまた寝返りを打った。
悩み事なんて答えが見つからないから悩むのだ、そう考えると答えが簡単に見つかってたまるか。






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とにかく悩むシンジ君



あきゅろす。
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