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☆special☆
2013.2.14 バレンタイン 土銀+沖神要素有
2013 St. Valentine's day
(土銀&ほんのり沖神)




ったくどのチャンネルに変えても浮かれた内容ばかりで朝からうんざりだ。
今日ばかりは結野アナの「素敵な一日を〜」にハーイと返事をすることができなかった。
世はバレンタインデー一色。
お菓子会社の陰謀と知っていながらこの浮かれっぷり。
日本人ってのは本当にお気楽な民族だ。

この悪辣な習慣のせいで、俺はこの一週間ほとんど甘味の摂取ができていない。
団子屋でさえ「バレンタインデー団子」なる謎の商品を売り出して、独り身の男が入りにくいったらねぇ。

まぁ、独り身ってのは語弊があるっちゃぁあるんだが…。

アイツは甘いモンなんて食わねぇし、ましてやアイツが俺のためとは言え女どもに混じってチョコレートを買ってくるとは思えない。
俺だって嫌なのに。

はぁー…。早く15日になんねぇかな。気兼ねなく甘味を買いに行ける日が待ち遠しい。

「銀ちゃん」
「お、神楽。お前何処行ってたんだ…?てか、なんだその荷物」
「ちょっと買い物行ってたネ」
「酢昆布か?」
「…デリカシーのない男は嫌いネ」

朝から留守をしていた神楽が定春と一緒に帰ってきた。
両手には大きな買い物袋が二つ。
確かに酢昆布にしては量が有りすぎる。

何を買ってきたのかと袋の中を覗こうとしたら、モジモジしながら袋を後ろに隠した。
そしてほんのり頬を染め、上目遣いで
「銀ちゃん、チョコレートケーキー作らないアルか?」
と聞いてきた。

「はぁ?チョコレートケーキ?作る予定はねぇけど」
「じゃぁこれから予定入れればいいネ」
「なんで。面倒くせぇ。わざわざこんな日にそんなもん作る気にならねぇよ」

誰にももらえないからって自分で作るなんて、これ以上虚しいことがあるか。

「きっと作ったら楽しいアルよ!」
「楽しくねぇって」
「作ってみなきゃわからないアル!」
「しつけーな。なんでそんなに作らせたいんだよ」
「つ、作らせたいわけじゃないネ!!ただ、丁度材料が…」

どさっ

「ここに、落ちてるアル」

今お前が落としたんだろうが。
つか、買い物袋の中身ってチョコケーキの材料だったのかよ。

…ん?誰のために作るんだ?
俺のため、じゃぁねぇよな。俺に作れって言ってるんだし。

もしかして

「新八にか?」
「新八にあげるくらいなら、自分で食べるアル!」

…だよなぁ。

「じゃぁ誰にあげたいんだよ」
「…秘密ネ」

そう言ってまた頬を赤く染めた。

ったく、色気づきやがって。ガキの癖に。

「でもよ、神楽。誰にあげるにしても、お前が自分で作って渡した方がいいんじゃねぇか?」
「チョコレートケーキって、卵かけご飯と同じくらい簡単アルか?」
「いや、流石にそれは…」
「それに二人で作れば一石二鳥ネ!!」

はあ?

「いいからさっさと作るアル!」
「うわっ、お、おい押すなってっ」

力づくで台所へ連れて行かれた俺は、結局、強制的にチョコレートケーキを作るハメになった。

しかも、大量に。

部屋中に充満する甘い匂いと、大量のチョコパウンドケーキ。
どんだけ大食らいな相手に渡すんだよ。
夜兎のバカ兄貴にでも送るのか?

…んなわけねぇか。

「で、これをどうするんだ?おしゃれな箱とかねぇぞ」
「そ、そんなのいらないアル。小さく切って適当な袋に入れて持って行くネ」
「あーそーかィ。じゃ、さっさと切っちまうか」
「駄目アル!それは私の仕事ヨ」

ケーキ作りを殆ど手伝わなかった神楽が、カットだけは絶対に譲らないと包丁を俺の手から奪う。
「手切らないように気をつけろよ」
「大丈夫ネ!…銀ちゃんはあっち行ってて」
「は?」
「もう用無しネ。邪魔アル」

へーへー。
作るだけ作ったら俺は必要ねぇってか。
ったく、女ってのは面倒くせえな。

「1本くらい俺用に残しとけよ」
刃物を持った神楽と喧嘩するのも危険なので、大人しく台所から退散することにした。

 

 

「で、なんで俺まで一緒に行くんだ?」
「こんなに沢山レディに持たせる気アルか!」

いや、材料は一人で買ってきたじゃねぇか。
それに
「原チャを片手で止めるような奴を、この国じゃレディとは言わねぇっつったろ」
「ごちゃごちゃうるっさいネ。黙ってついてくるヨロシ」

ったく、なんなんだよ。
俺に作らせたケーキを俺に(殆ど)持たせるとか、どんだけ都合のいい男だ。

でもまぁ、コイツが誰にあげるのか気にならないっつったら嘘になるし…。いや、どうでもいいけど、どうでもいいけどホラ、変な男にひっかかってたら俺が殺されるからね、あのハゲに。

 

「おーい、神楽…」
「なにアルか」
「目的地ってもしかして、ここ?」
「ここにはバレンタインデーにチョコがもらえない可哀想な男が沢山いるネ」

いや、そりゃそうだろうけど。
つか、ここにも1人いるんだけど…それは無視かよ。

「でもよぉ…ここって…」

真選組の屯所じゃねぇか。
「もしかして…」
「ち、違うネ!義理チョコアル!アラン・ドロン、ネ」
「ボランティア、な」
“ラン”しか合ってねぇし。よくわかったな、俺。

まぁいいや。こんなところにいつまでもいたら、どっかの誰かさんに変な誤解されそうだしな。
「さっさと誰かに渡してけぇるぞ」
「あ、ちょっと待って!はい、これ」
「ん?」

大量のパウンドケーキが入った袋とは別に、綺麗にラッピングされた一欠片のケーキ。
俺の手から大きな袋を受け取って、代わりにそれを袂に忍び込ませてきた。

「それは銀ちゃんのネ」
「はぁ!?お前、一本残しとけつったろ。何で俺のが一欠片なんだよ」
「違うアル。銀ちゃんが食べる分じゃないネ。銀ちゃんがあげる分ヨ」

…は?

「マヨラにあげたらきっと喜ぶアル」
「ぶはっ!…ちょ、お前なに言って…っ」
「私が気づいてないと思ってたアルか?神楽様は何でもお見通しネ」

マジ、かよ…。
「どうせマヨラは甘いもの嫌いだからって準備してないでしょ?でもきっと、銀ちゃんの手作りなら喜ぶアル」
「お前…」
だからさっき“一石二鳥”つったのか。

「今日は女の子からチョコレートをあげる特別な日ネ。さっさと渡してくるヨロシ」
「いや、俺男だけど…」
「え?逆アルか?」
「何が」
「もしかしてマヨラが下だったアルか?」

はぁぁぁ!?
お前、何いってんの!?
つか、どこまで知ってんの!?

「いや、あのな神楽…」
「萌えないアル」
「はい?」
「マヨラがあんあんしてるのは萌えないアル」
「ぶっ…!お、おま、お前…ッ」
「銀ちゃんの方がまだマシだと思ったけど、違うアルか?」
…どう答えればいいんでしょうか…。

「どっちがどっちアル?銀ちゃん」
「旦那があんあんしてるに決まってんだろィ」
お、沖田くぅん!?
なんでここに沖田君が?…あ、ここ屯所か。

「やっぱりそうネ!ほら、さっさと渡してくるヨロシ」
「土方コノヤローなら部屋でシコシコしてやすぜ」
「…あ、じゃぁこれ、あとで沖田君が渡しといてくれよ」
「嫌でさァ。ホモだと思われたら迷惑なんで」

…。
その言葉、どう受け取ったらいいんでしょう。

「じゃぁ、神楽お前が…」
「嫌アル。マヨラに誤解されたら迷惑ネ」
「いやでもよぉ…」
「ごちゃごちゃうるさいね!さっさと…行く、ヨロシーーーッ!」

どがっ

「うあああああーーーっ!!!」

ガッシャーン!!

神楽の強烈な蹴りで吹っ飛ばされた俺は、ピンポイントで土方の部屋に強制不法侵入してしまった。
「いてててて…」
アイツ思いっきり蹴飛ばしやがって。内蔵飛び出したらどうしてくれるんだ。
畳で擦れて切れた唇を拭いながら顔を上げると、瞳孔全開の土方と目があった。
上半身をこちらに振り向かせた状態で固まっている。
そりゃ突然俺が突っ込んで来たんだし、びっくりするのは当たり前だ。

「よ、よぉ…」
「お、おぅ…どうした、急に」

いやほんと、急だよね。超特急だよね、コレ。
「あ、あのよ…」
「くくく…お前、そんなに欲しかったのか?」
「は?」
「チョコレート、だろ?」
「へ?」

体勢を整えた土方がチョイチョイと手招きして俺を傍に呼ぶ。
よいしょと立ち上がって近くに行くと、机の中から小さな箱を出し
「ほんとは夜にでも届けてやろうと思ったんだが…」
そう言ってその箱を手渡してきた。

「え、と…これ…」
「チョコに決まってるだろうが」
「…マジで?」
「なんだよ、これが欲しくて劇的に突っ込んできたんだろ?」

いや、違うけど。
違う、けど…でも…。

土方が俺のためにチョコを用意しててくれたなんて…。

ヤバイ。
どうしよう。

…ちょっと…いや、かなり…嬉しい…かも。

だって、この時期にコレ買うってかなり勇気がいるわけだし。
俺でさえ、普通に買うの我慢してたくらいだし。

「どうした、いらねぇのか?」
「…いる」
「ぷっ」
「な、なんだよ」
「お前のことだから、もっと堂々と“チョコくれコノヤロー”って言ってくるかと思ってたのに…」

ふわりとタバコの匂いが鼻腔を掠め、熱い腕に包まれる。
「ちょ…っ」
「こんなふうに顔赤くして喜んでくれんなら…やっぱ買っといて良かった」
「土方…」

そっと土方の背に腕を回すとカサリと袂から音がして、
そう言えばさっき神楽がアレを忍ばせてくれたことを思い出した。

ほんとはこんなの小っ恥ずかしくて…。
甘いもの食わないだろうなんてのは、唯の照れ隠しで…。
バレンタインデーなんて渡すつもりなかったけど。

でも、土方は俺のために用意しててくれた。
だから、今日は。
少しだけ素直になってみても…罰当たんないかも知れねぇな。

「土方、あの、さ」
「ん?」
「…これ…」

ごそごそと袂を漁って、チョコパウンドケーキを取り出した。
流石に可愛らしいラッピングがされたままじゃ恥ずかしいから。

「もぐっ…」
抱き合ったまま土方の口へ小さくちぎって放り込む。
「一応、手作り…だから」
「もぐもぐ…よ、ろずや…」
「悪ぃ、甘ぇの好きじゃねぇのにな」
「いや…ごくん。…好きだ」

ぱくり。
腕をとって残りのケーキに食いつきながら耳元で囁かれた言葉に、ドクンと一際強く心臓が脈打つ。

っとにもう…
「バカ…」

でも、
――俺も。

そう小さく呟いてから

――あり、がと。

今度は少しだけはっきりと、赤くなった土方の耳元で囁き返した。

 

 

「ったく。不器用な連中ネ。チョコレートくらいさっさと渡せばいいのに」
「まったくでさァ…ところでチャイナ。お前何持ってんだ?」
「あ。えーとこれはアレね。お前ら真選組のむっさい連中にチョコパウンドケーキ…い、言っとくけど、銀ちゃんの分の余りアルからな!」

がさりと音を立てて総悟に渡された大きな袋から、甘い香りが二人の間に充満する。

「…随分でかい“余り”でさァ。…隊士全員分かよ?」
「そ、そうアル。…え、と、でも…切り分けるとき失敗しちゃって、ひ、一つだけちょっと大きいネ…ソレお前が食べてもいい、アルよ…」
「…毒入り!?」
「失礼ネ!いらないなら食べなくていいアル!!」
「……いや――」

 

まったくほんとに…


不器用な連中でさァ。

 

[END]
-------
ハッピーバレンタイン(*´∀`)
すみません、NLも混ぜてしまって^^;
でもこの二人のほのぼの喧嘩っぷるも好きで♪←今回喧嘩してないけど。

その分、土銀は甘々にしてみました。楽しんでいただけたら幸いですv

2013.2.13 エル


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