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☆special☆
2012.11.22



「銀時!結婚しよう!!」
「…は?」
「今、直ぐ!!just do it!!」
「ちょ、いややややや、ちょ、待て!落ち着け土方!!」

いつもの如くかぶき町をふらふらと歩いていたら、すっごい勢いで前から土方が走ってきて、
そのまますっごい勢いで路地裏に連れて行かれ、すっごい勢いで言われたのが冒頭のセリフだ。

「悪ぃ、指輪とかそういうの準備する間が無くてよ…でもホラ、じゃじゃーん。」

“じゃじゃーん”じゃねぇよ。何キャラじゃねぇ事やってんだよ。しかも、古くね?
…って、そんな事より…。
「…オイ、なんだ…そりゃ…」
「婚姻届だ!そこの役所でよ、貰ってきた。因みに俺の方はもう署名捺印済みだ。」

…証人欄までご丁寧に署名捺印済みだった…
しかも、ゴリラじゃねぇか。20歳以上なら人間じゃなくても大丈夫なのかよ、オイ。

「あとは銀時、お前の署名捺印と…証人欄はやっぱり階下のスナック店主がいいよな。
お前にとっちゃぁ親みてぇなモンだろ。お前もそこで署名捺印すりゃいい。印鑑持ってるか?」
「いや、一応社長なんで印鑑くらい持ってっけどよー…つか何で結婚?何で今日!?」

そもそも男同士で結婚って…無理じゃね?

「銀時!!!」
パシッ
「お、おう…!?」
なんかすげぇ力で両手握られたんですけど…顔近いんですけど…目血走ってるんですけど…

「俺ァよ、俺ァ…お前を…死ぬほど独占してぇッ!!」
「そ、そりゃ…ど、も…ッ(ん?死ぬほど独占?何か言葉変じゃね?)」
ぎゅぅぅぅぅっ
あでででででっ、手、手、痛ぇって!!なんか色々痛ぇって!!

「でも、お前を残して死にたかねぇから、死ぬほど独占してぇというより、むしろお前をむしゃぶり食い尽くしたい!!」
いやいやいや、食い尽くされたら俺死ぬから。お前生きてても俺死んじゃうから!!
つか、手痛ぇよ。色々痛ぇよ。何より、怖ぇよお前!!

「だから、結婚しよう!!」
“だから”の意味がわかりません!!
「とにかく、とにかくちょっと落ち着けって土方!」
「落ち着いてたら、間に合わねぇだろうが!!」
「は?何に?役所の受付時間?(24時間出せんじゃねぇの?いや、出すかどうかは別として!)」
「そうじゃねぇ…いや厳密には無関係じゃねぇが…」

ぎゅぅぅぅぅぅっ
くしゃくしゃくしゃっ

あでででででっ、だから手、手!!
つか、婚姻届ぐちゃぐちゃになってんぞ?大丈夫か!?

「俺ァよ、俺ァ…お前を…死ぬほ、いや、むしゃぶり食い尽くしたいッ!!」
うん、それさっき聞いた。どうもありがとう…?…食い尽くされたくねぇけど。

「だからよぉ…だから…俺ァよ…今日お前と結婚して…今日という日を一緒に過ごしてぇんだよ。…イチャイチャと。」
「ぶっ…イチャイチャってお前…」

イチャイチャは割りと…普段してんじゃねーか…イチャイチャっつーか、お前がベタベタと…。
「だから、何で結婚?何で今日なんだよ。」
「今日じゃなきゃ駄目なんだ!」
「だから何で!!」
「…11月22日…だろ、今日。」
「あ、うん。…それが?」

「いい夫婦の日…だ。」
「!?!?!?!?!?!?」

…はぁっ!?

 

 

「銀ちゃん、どうしたアル?」
「大丈夫ですか、銀さん?」

俺の腕を掴んだまま意気揚々と万事屋へ向かおうとしていた土方。
もう、唖然としちまって無抵抗だった俺。

そこへ偶然、土方の携帯がプリキュアソングを奏で、仕事だから仕方ないと肩を落とし、屯所へ戻っていった。

ただし、しっかりと婚姻届を俺に握らせ
「仕事が終わったらすぐ行くから!署名捺印して待ってろな?二人で一緒に出しに行こうな!な!な!」
ガッツリ念を押されたのだった…。

勝手に行くわけねぇだろが!!てか、二人で一緒もありえねぇし!!
つか、受理してもらえないからねコレ!!

で、1人ふらふらと万事屋へ帰ってきたのだが…。

「銀ちゃん、口開きっぱなしアル。」
「まさに“開いた口が塞がらない”状態ですね…顎でも外れたんですか?」
「…銀ちゃん、フ○ラのやりすぎアルか?」
「ちょ、神楽ちゃん!!どこで覚えてきたのそんなこと!」
「ドSが言ってたネ。“万事屋の旦那も土方さん相手じゃ、大変でさァ。ヤツのは無駄にでかいから、フ○ラで顎なんちゃら症で口がどうのこうの”って。」
「沖田さん、あの人ほんとに警察…?」

「はぁ…。」

ああもう、溜息しかでねぇ。
下ネタ全開の神楽にツッコミ入れる元気もねぇ。
(ただし総一郎君は、後でシメる!)

「ちょっと銀さん、本当にどうしたんですか?」
「病院一緒に行ってあげようか?銀ちゃん。泌尿器科でいいアルか?」
「いや、神楽ちゃん、それ多分違う…。」
「病気じゃねぇよ…いや、むしろ、アイツの方が病気だ…。」

ったく、こんなもん用意しやがって。
何がいい夫婦の日だよ。ただのこじつけじゃねーか。

カサッ
「あっ、コラ!」
「何アルかこれ。」
「ちょ、返しなさい神楽ちゃん!!」
「返せと言われると返したくなくなるのが女心ネ!…うっ、ぐぇっ…」

な、なんだ?神楽が突然泣き出したぞ!?
まさか、俺が嫁に行くと思って悲しくなったのか!?

「ち、違うぞ神楽コレはー…」
「銀ちゃん…なんて書いてアルか…読めないネ…えっぐ、うぇっ…」
「…」
「どれどれ?」
「うわ、バカ新八止めろ!!」

取り返そうと手を出したが、神楽にバチンと叩かれた…。
最悪だ。

「…え!?婚姻届ぇぇぇ!?」
「コーイン…?」
「違う違う違う違う違う!!婚姻!結婚届けだよコレ!!」
「ええええ!?銀ちゃん、マヨラと結婚するアルか!?マジでか!!」

ええ、アイツはマジみたいです…。

「でも銀さん、同性結婚って…。」
「認められてねーよ。ンなこたぁ知ってるよ。でもよー…あのマヨがよぉ…今日はいい夫婦の日だから、結婚して一緒に過ごしたい、んだとさ。」
「「!?ぶはははははははは」」

だよなー…笑えるよなー…俺も当事者じゃなかったら、クソ笑うもの。腹抱えて笑うもの。

「どうしたもんかねぇ。」
「金だけ貰って、捨てちゃえばいいアル!」
「神楽ちゃん、それじゃ結婚詐欺と一緒だよ…。」
「何言ってるネ。銀魂で詐欺なんて公式ネ。」
「また身も蓋もない…。」

ガラッ

ん?玄関扉の音?まさか、もう来たのか土方!早くね?
「銀時、いるかい?」
なんだよ、お登勢のババァか。
「家賃なら、こないだ払ったろ(土方が)」
「そうじゃないよ。さっき、真選組の副長さんから電話があってねぇ。」
「はぁ?土方から?何で。」
「アンタ…ぷくく…結婚…んぶぶ…するらしいじゃないか。ぶぶぶ…」
「!!」
「ホラ、さっさと出しな。」
「何をだよ。」
「婚姻届に決まってるじゃないかぃ!ぷぷっ…証人欄書いてって頼まれてんだよ。ぶぶっ…。」

あーのーやーろー!!!!!
俺が自分から行動しないと思って、先手打ちやがった!!!

「あ、お登勢さん…ぷくく…婚姻届けなら僕が…ぶぶっ…」
「銀ちゃん達、いい夫婦の日を一緒に祝いたいアル。早く書いてあげるヨロシ。ぶぶっ…」
「はぁ?!いい夫婦の日だぁ!?」

「「「ぶははははははははははははは!!!!」」」

あーもう、死にてぇ。

散々笑い飛ばされ、震える手で書かれた証人欄。
字、めちゃくちゃじゃねぇか。読めねぇだろコレ。大丈夫なのか?
いや別にどうせ受理されねぇ書類だからいいけどよ…。

署名捺印を終えたババァは、
「じゃ、初夜の二人を邪魔しちゃ悪いしねぇ」
とか言いながら、新八と神楽を連れ万事屋を出て行った。

なんだよ、初夜って。
なんでもう、結婚した事になってんだよ。

なんだこの茶番。

あーもう、こんな紙捨てちまおうかな。

パサッ…

「ん?なんだ?」

婚姻届の下から何かが落ちた。
小さなメモ用紙…?

ひらりと床に落ちた小さな紙を拾い上げると、そこにはババァが書いたと思われる文字が並んでいた。

「…あの、クソ…ババァ…」
くしゃりと握り締める。…恥ずかしいこと…書き、やがって…。

『銀時、結婚なんて気持ちの問題さね。なかなかいい男じゃないか。…幸せになんな。』

「バカ、やろ…」
柄にも無く…ちょっと…鼻がツーンとしちまったじゃねぇか。
「幸せに…か…。」

先生もよく…言ってくれたっけな…。

ほんとに、俺の周りはバカばっかだ…クソ…ま、俺も…かねぇ。
ゆっくりとデスクに向かい、ペンを手に取る。

一文字一文字丁寧に書いていく自分の名前。

[夫 土方 十四郎] [妻→夫 坂田 銀時]

たまにはこんな茶番に付き合ってやるのも、ま、悪くねえ、か。
誰もいない部屋でクスリと笑う。

たかが紙切れ一枚。
でも、なんだか不思議なもんだな。
本当に夫婦になったって感じがする。

ん?夫夫か。ま、なんでもいいか。

ガラガラッ
お、ナイスタイミング。

「銀時!!遅くなって悪かったな!!」
「いーや全然。」
「おい、あの…」
「ほらよ。」

今書き終えたばかりの婚姻届を土方の目の前に翳した。
「銀時…っ」
嬉しそうにしやがって。ほんと、バカ、な。
「ありがと…よ…」

翳した婚姻届ごと手を引き寄せられ強く抱きしめられる。
俺も婚姻届を握ったまま、土方の腰に手を回した。

互いの肩に顔を埋めさせ抱き合う静かな時間。

ああ…確かに、いい夫婦の日だ。

「こんな紙切れ意味ねぇかも知れねぇけど…これからもよろしくな土方。」
「こちらこそ、だ。銀時…。ずっと絶対ぇ、離さないからな。」
「はいはい。頼りにしてますよ、大黒柱さん。」
「お安い御用だ。…さ、急いで出しに行こうぜ!」

「は?何を」
「婚姻届に決まってるだろ。」
「は?何処に?役所か?受理されねぇだろ。…おっとと…」

ぐいっと手を引っ張られ、玄関へと向かう。
一体何処連れてく気だよ。
役所なんか行ったら、いい笑いもんだぞ!!

「お、おい土方!!」
「松平のとっつぁんの所だ。もう話はついてる。」
「はぁ?!」
「とにかくブーツ履け。急ぐぞ。」
「うわととと…っ」

急かされてブーツを履き、万事屋を飛び出した。
階段を駆け下りて、そのまま息つく暇も無くかぶき町を駆け抜ける。

「ちょ、待て、どういう意味だよ!!」
「同性でもな、幕府の許可があれば結婚できるんだよ。」
「へ?」
「本当は手術とかしてよ、一方が戸籍上女にならなきゃ駄目なんだけど。」
「へ?は?俺戸籍上も男だぞ列記とした!!」
「だから、特例でとっつぁんが幕府からも許可とってくれたんだよ。」
「何で!?何で特例とかおりちゃうわけぇ?」
「俺が結婚すれば、娘が俺を諦めるからだってよ。まぁ上には、真選組の更なる躍進の為とか話つけたらしい。」
「娘って…めちゃくちゃ個人的な理由じゃねぇか。」
「まぁな。でもどうでもいいんだろ、そんな事ぁ。とにかく婚姻届をとっつぁんに渡せば晴れて俺達は本物の夫婦だ!」

「ええーーーー…!?」
ま、マジでか…。

俺、土方姓になっちゃうの?
土方銀時になっちゃうの?

そ、そんな覚悟全然してねぇんだけどぉぉぉぉぉぉ!!

「銀時!」
「な、なんだよ…ッ」
「今夜は初夜だな!!」
「ぶっ…」

往来でそんなこと叫ぶなぁ!!!

「今夜は生だぞ!生で出すぞー!!!」
「おいぃぃぃぃぃ」

止めろ!みんな振り向いて見てんじゃねぇか!!!

てか、生で出しても孕まないからね?
俺が腹痛おこすだけだからね?

「毎年いい夫婦の日を結婚記念日として祝おうな!!俺ぁどんな事があっても、その日は帰って来て
お前をむしゃぶり食い尽くすからなぁぁぁぁ!!!」

ひぃぃぃぃぃぃっ!
止めてもう、勘弁してくれぇぇぇぇ!!!!

 

いい夫婦の日は、これから毎年
俺が4分の3殺しにあう日になりそうデス…。

 

ヒィィィッ!

フンッフンッ!!

の日じゃねぇぞ、コノヤロー!!!!!

 

[END]
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はいっいい夫婦の日更新でした!(笑)

2012.11.22 エル



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