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過去拍手お礼文
拍手お礼文[6-4]R18
注)R18
※性的表現を含みます。高校生を含む18歳未満の方は、閲覧をご遠慮下さい。※





「土方、俺帰った方がいい…?それとも傍にいて、いい?」
躊躇いがちに問われた言葉に、なんて返したら言いか分からずくしゃりと髪を握る。
「…銀時、お前さ…」
「見たんでしょ?」
「え?」
驚いて顔を上げると、眉根を歪ませた銀時と目が合った。

「否定、しねぇのか」
「否定したら信じてくれる?」
「…信じたい、とは思う…多分」
「嘘」

赤い痕が残る腕を哀しげに見つめながら擦り、銀時は言葉を続けた。

「俺怖ずっと怖かった…。お前さ、真面目じゃん?だから、俺のために色々ネットとかで情報得たりして男同士のやり方とか勉強するんじゃねぇかって、そしたら、いつか見付かっちまうんじゃないかって…」

「あれ、は…お前なんだろ」
「…そうだよ。どの動画を見たのか分からないけど、銀髪の中学生は、俺」

“どの動画”
それはAVに出演したのが一度ではないという事実。
そりゃそうだ。一度の出演であんなに慣れているはずがない。

「…もう、終わり?俺達。やっぱり、許せない、よな」
「…あぁ」
「そか…」

俯いた銀時の髪が小刻みに揺れる。
…泣いている?
泣くくらいなら、どうしてあんなことしたんだよ。
どうして、黙ってた。
俺にバレなければずっと隠し通して、騙し続けるつもりだったんだろう。
嘘つき。
卑怯者。

込み上げる怒りで拳が震える。
本当に一発殴ってやろうかと思った。
その権利が俺にはあるはずだ。
まずは怒鳴りつけてやろう、そう思って口を開いた時、再び上げた銀時の顔を見て俺は言葉を失う。

泣いてはいなかった。
目こそ潤んではいたが、涙を溢した形跡は見付からない。

口端を少し噛んだまま、銀時は微笑んでいたのだ。
そして
「ありがとう」
と言った。

「俺、嬉しかった。好きな奴に触れてもらうのがこんなに嬉しいことだなんて俺、知らなかったから。ちょっと強引だったけど、そんな風に自分を求めてもらえて、嬉しかった」
「銀時…」
「でも…違かったんだよな、本当は。俺に触れながら確かめてたんだよな。俺が動画に出ていた奴かどうかを…それでも、それがわかった今になっても俺…。だから、だ、から、ありがとう土方」

―――ごめんな

最後に呟かれた言葉はあまりに小さくて、口の動きでしかわからなかった。
そんな掠れた声でごめんなって呟いて、お前なんで、微笑ってんだよ。

立ち上がり背を向けた銀時の腕を掴み、強引にこちらを向かせる。
もう、汚いとは思わなかった。

ただ、聞きたいと思った。
知りたいと、思った。

こんな風に哀しく微笑む銀時が、金の為に、己の欲の為に自らの身体を汚したなんて思えなくて、そのことに俺は漸く気付いて。

どうして今まで銀時の話を聞いてやろうとしなかったのだろう。
どうして目で見た事実だけで判断してしまったのだろう。

俺は、知ってたはずだ。
銀時がそんな奴じゃないってこと。
自分の気持ちを素直に吐き出すことが何より苦手で、いつも笑って本心を隠してしまう奴だってこと。

知っていたのに。ちゃんと見えていたはずなのに。
あんな見てくれだけの動画にうろたえて、あれは俺の知らない銀時だって思い込んで、酷い仕打ちをした。最低の行為をした。話を聞いてやることも、問う事もせず、最初から疑いだけを持ってあんな卑怯な方法で確かめたんだ。

白であって欲しい
ではなく
どうせ黒なんだろ

そう決め付けていた。

汚いのは、俺の方だったんだ。

「土方、痛い…」
「話してくれねぇか」
「いやあの、掴まれてんの俺の方なんだけど…」
「その“放す”じゃねぇ。理由が聞きてぇ、ちゃんとお前の口から」
「…聞いてどうする、んだよ」
「わかんねぇ」
「理由なんか知っても、事実は変わらないよ」
「んなことはわかってる。それでも知りてぇんだよ」
「でも」
「頼む、教えてくれ。頼む…」

はぁー…。溜息をついた銀時へ傍にあった毛布を手渡すと、くるりと身体に巻きつけた。
腕をひっぱり、隣へ座らせる。
そして語られた真実は…。

「俺ね、親の顔知らないんだ。物心付いたときには施設にいて、こんな風貌だから施設でも友達なんかできなかったし、学校では苛められてさ。だから、小学校を卒業してすぐ施設を抜け出したんだ―――」

俯きながら、それでも自嘲めいた微笑を浮かべる銀時を、俺は無意識に抱きしめる。
同じ体格の銀時が、あまりにか細く、小さく感じた。
震える身体が愛おしくて、たまらなかった。



「食べるものも、着替えなんかも当然なくて公園で震えながら生活してた。そしたら優しそうな男の人に声かけられて、飯食わせてくれるって、あったかい布団で眠らせてあげるって、それは本当だったんだけど…」

「危ない連中、だったのか?」
コクンと小さく頷く。

「気づいた時にはもう逃げることなんて出来なくなってた。ほんと、タダより高いモンはねぇよな。あはは…」

飯と寝床を与えられた代わりに銀時が求められたのは、身体。
1本目は無理矢理。そこからはそれをネタに脅され、自ら出演するよう仕向けられたのだという。時にはソコを拡張する為何時間も棒を突っ込まれたまま放置されて…

「フィ○トファ○クとかね、異常だろ。だからさ、身体守るために自分で慣らす事覚えてさ、ローション仕込んでおくなんて当たり前の事だった。だって、いつ仕事が舞い込んでくるかわからない日常だったんだよ」
「銀時…」
「あはは。なんで土方がそんな顔するの?」
「笑うな」
「え?」
「もう、無理して…笑うな」
「土方…」

毛布越しに抱きしめた銀時の身体。
俺と同じ年月を経て来たこの身体に、その心に、俺には到底考えられないほど重く暗い過去を抱えて生きてきた。

なのに、それをずっと隠して…お前は笑ってたんだな。
普通の高校生を演じてたんだな。

「気付いてやれなくて…ごめん」
「どうして、土方が謝るんだよ」
「俺何も知らなくて、あんな卑怯な方法でお前を追い詰めて…ほんとにご、めん、な」
「ちょっ、泣くなって!俺今は普通に高校生活楽しんでるし。あの世界から救ってくれた人にちゃんと大事にされてっから、な?あーもう、泣き止めよ」
「泣いて、ねぇ…」
「…はいはい」

ぽんぽんと頭を撫でられ、慰めるはずの俺が慰められるという失態。
だけど、ツンの喉が痛んで…涙…いや、鼻水があとからあとから流れ落ちるのを止めることが出来なかった。


静かな時間が流れる。
いつの間にか毛布の中に俺も一緒に包まれていた。
お互い一言も喋らず呼吸の音だけが響く空間で、肩を寄せ合い手を繋いで虚空を見つめている。

どれだけ時間が過ぎただろうか。
突然くしゅんと銀時がクシャミをした。
そういやこいつ、下半身が裸のままだ。
いくら暖房の利いた部屋で毛布に包まっていても身体は冷えていくだろう。

「土方、服着ていい?」
ふるふる。
駄々っ子のように首を振る。
「でも俺、風引いちゃうよ」
「引かせない」
「は?」
「さっきの続き、していいか」
「はァ!?っうわ…っ」

巻きついた毛布を開きながら、銀時をベッドに押し倒す。
ジタバタと暴れる身体を、きつく抱きしめ動きを封じた。
顔を見られたくなくて、胸に押し付ける。

「嫌か」
「え…あの、だってさ…嫌なのお前じゃねぇの…」
「俺はお前を抱きたい」
「…」
「嫌か」
「嫌、じゃ、ない…でも」
「お前が嫌じゃないなら、もう一度チャンスが欲しい。今はもう、疑いとか迷いとかそんなの一切ねぇから…やり直すチャンス、くれねぇか。あ、やり直すってそういう意味じゃなくてだな、あの…」

ぷっ
あはははは、と胸を揺らしながら銀時が笑う。
本当に楽しそうに。

「いいよ。こんな俺でよかったら」
「お前じゃなきゃ嫌だ」


じゃぁ…


―――キスから始めてくれる?


[続く]

拍手ありがとうございました!
2013.2.4


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